カスタム妄想
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剥がれない!ビンテージロードバイクの頑固な塗装。剥離剤が効かない理由とプロが教える対処法

みぞお
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ある日のフリーマーケットで、1980年代頃のビンテージロードバイクフレームを発見しました。パイプはコロンバス製らしく、ラグも美しい高級フレームです。

ジャンク品扱いで安価に手に入れた「お宝」でしたが、持ち帰って細部を見ると、あちこちの台座(ブレーキアウターガイドやWレバー台座など)が杜撰に切り取られている状態。

「これは綺麗にレストアして、あの美しいカラーで再塗装するしかない」

そう決意し、まずは台座跡をヤスリで整え、下地処理を完了。いよいよ、DIYレストアの難関「塗装剥離」に取り掛かりました。しかし、これが40年モノの塗装との長い格闘の始まりだったのです。

この記事は、あらゆる剥離剤を試してもビクともしなかった古い塗装との戦いの記録と、最終的にプロのビルダーに教えてもらった「衝撃の事実」をまとめたものです。

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【重要】塗装剥離は超危険!作業前の完全防備を

本題に入る前に、最も重要な注意点です。塗装剥離剤(特に強力な有機溶剤系)は、人体にとって非常に危険な薬品です。

  • 皮膚に一滴ついただけで、30秒ほどで激しい痛みを感じます。
  • 目に入れば失明の恐れもあります。

作業は屋外で行おう

作業時は、ビニールシートを敷いた屋外や換気の良い場所で、以下の装備を絶対に装着してください。

  • 耐薬品性(耐溶剤性)の手袋
  • 保護メガネ(ゴーグル)
  • 防毒マスク

塗装剥離の迷宮:ビクともしない40年前の塗膜

過去に何度かフレームの塗装剥離は経験済みでした。「いつものように剥離剤を塗れば、数十分後には塗装が浮き上がってくるだろう」と高を括っていましたが、現実は甘くありませんでした。

試行錯誤①:定番の強力剥離剤(ホルツ)

まずは、DIY店で手に入る中で最も強力とされる「ホルツ」の塗装剥がしを使用。

冬場で気温が低いため、30分ほど放置。しかし、いつものように塗装がメラメラと鱗のように浮き上がってくる気配がありません。

プラスチックのスクレーパーで擦ると、表面のクリア層とデカールだけが溶けて剥がれました。古いビアンキ特有のくすんだチェレステカラーは、クリア層が黄変していただけだったようです。

しかし、肝心の塗膜本体はビクともしません。

試行錯誤②:SNSで話題の「魔法の水」

次に、SNSのリール動画などで見かける「塗るだけで塗装がツルリと剥がれる」という触れ込みの、無色透明な剥離剤をAmazonで発見。

中国語と英語の説明書を読み、フレームを洗浄・乾燥させてから塗布。しかし、何時間経っても何の反応もありませんでした。

試行錯誤③:プロ御用達「最強」の業務用剥離剤

「こうなればプロ用だ」と、業務用で「これで落ちないわけがない」レベルの最強剥離剤(ナトコ スケルトンM-201)を購入。

これはゴム手袋越しに皮膚まで到達しそうなほどの強力な製品です。メーカーに冬場の使用方法を確認し、缶をよく振って撹拌。さらに、フレームのパイプ内にカイロを詰めて母材の温度を上げてから塗布しました。

3時間後、見た目に変化なし。

スクレーパーでガシガシ擦れば多少は剥がれるものの、「剥離剤が効いている」というより「物理的に削っている」感覚です。これではサンドペーパーと大差ありません。

試行錯誤④:アプローチを変えて「水性剥離剤」

有機溶剤系がダメなら、とアプローチを変え、環境対応の「水性剥離剤」(カンペハピオ)を試します。

今度はAIに「剥離剤自体を温めた方が効果的」と教わり、紙コップに分けた剥離剤を湯煎で温めてから塗布。アンモニア臭のするペースト状の液体です。

説明書では5〜30分で剥がれるとありますが、1時間放置しても全く剥がれませんでした。

試行錯誤⑤:最終手段(業務用+加温+保温)

最後の望みをかけ、③の業務用剥離剤を「湯煎で温め」+「過去イチで厚塗り」し、さらに上から断熱シートでフレームを包み、内部に「高温カイロ(マグマ)」を仕込んで加温・保温しました。

3時間後、結果はほぼ変わらず。

力を入れずとも剥がれる箇所がほんの8cmほどありましたが、ラグなどの複雑な部分は全く手付かず。全体の7〜8割は剥離できたかもしれませんが、剥離剤を使ったとは思えない無残な結果に終わりました。

なぜ40年前の塗装は剥離剤で落ちないのか?

ここまでやってもダメとなると、素人のDIYでは限界です。

後日、幸運にも老舗のフレームビルダー(専門家)に会う機会があり、この件について尋ねてみました。その答えは、衝撃的なものでした。

「あぁ、昔の塗料は現代の剥離剤じゃ落ちないよ」

ビルダー氏によると、理由は以下の通りです。

  • 昔の塗料は、現代では環境問題などの理由で使用が禁止されている原料(有害物質など)を含んでいる。
  • これらの古い塗料は、現代の環境基準に合わせて作られた剥離剤では化学反応が起きず、分解できない。

つまり、剥離剤のパワー不足ではなく、成分の「相性」の問題だったのです。

プロが教える「頑固な塗装」への対処法

40年モノのビンテージ塗装は、現代の市販剥離剤では歯が立たない可能性が極めて高いことがわかりました。

では、どうすればいいのか? 専門家が示した選択肢は、以下の2つです。

  1. 剥離専門の業者に依頼する 専用の強力な溶剤槽(ドブ漬け)や特殊な技術で剥離してもらう。
  2. サンドブラストで物理的に削り取る メディア(砂やガラスビーズなど)を高圧で吹き付け、塗膜ごと削り落とす。

DIYで完結させたい場合、残された選択肢は「物理的に削る」しかありません。

  • コンプレッサーを導入し、サンドブラストを行う。
  • グラインダーのナイロンホイールなどで地道に削り落とす。
  • 気の遠くなるような時間をかけ、紙やすり(サンドペーパー)で削る。

あるいは、剥離剤が化学反応である以上、気温が上がる「夏」まで待ち、再度試してみるという手もありますが、成功の保証はありません。

古い塗装のレストアは、現代の道具が通用しない「時間との戦い」でした。もしあなたが同じ悩みに直面したら、早めに「削る」方針に切り替えるのが賢明かもしれません。

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おっさんサイクリスト
自転車趣味歴だけは長いサイクリスト。レースは観戦するもので、自転車旅を楽しんでいます。西日本を中心に活動しています。
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