逆走自転車との事故、過失割合はどうなる?車側が損をしないための修正要素と「自転車同士」の判例基準を徹底解説
「前を向いて運転していたら、正面から逆走自転車が突っ込んできた!」 「相手のルール違反なのに、なぜ車側の責任が重くなるの?」
自転車の逆走(右側通行)は重大な道路交通法違反ですが、日本の交通事故には「弱者保護」の考え方があり、自動車が加害者扱いされるケースが少なくありません。しかし、諦めるのはまだ早いです。実は、相手が「逆走」という著しい過失を犯している場合、過失割合はあなたに有利に修正される可能性があります。
本記事では、損害保険会社や弁護士が指標とする判例基準に基づき、「車 vs 逆走自転車」および「自転車 vs 逆走自転車」それぞれの過失割合の目安を解説します。高額な賠償請求や、相手の「嘘」による泣き寝入りを防ぐための防衛策を身につけましょう。

【車 vs 逆走自転車】
車側の過失は減るが、ゼロにはなりにくい
まず、自動車と自転車の事故です。 通常、交差点などで出会い頭に衝突した場合、基本の過失割合は「車 80:自転車 20」程度からスタートすることが多いです(自転車が弱者とされるため)。
しかし、自転車が「逆走(右側通行)」していた場合、話は変わります。
逆走は「著しい過失」として扱われる
判例(別冊判例タイムズ等)の基準では、自転車が逆走していた場合、自転車側の過失が「+10〜20%」程度加算されるのが一般的です。
- 通常の事故
- 車 80% : 自転車 20%
- 自転車が逆走していた場合
- 車 50〜60% : 自転車 40〜50%
相手の違反のおかげで、こちらの責任割合は減ります。しかし、それでも「車側にも前方不注意がある」「予見できたはず」とされ、過失ゼロ(100:0)に持ち込むのは、ドライブレコーダー等の明確な証拠がない限り難しいのが現実です。
【自転車 vs 逆走自転車】
ルールを守った方が圧倒的に有利
次に、あなたが「正しく左側を走っている自転車」で、相手が「逆走してきた自転車」の場合です。
この場合、同じ「自転車(軽車両)」同士の事故となるため、弱者保護の概念は適用されず、純粋にルールを守っていたかが勝負になります。
逆走側の責任が極めて重い
正しく左側を走っていたあなたに落ち度がない(スマホ運転などをしていなかった)場合、過失割合は以下のようになります。
- 自分(左側通行) 0〜10% : 相手(逆走) 90〜100%
基本的に、逆走してきた相手にほとんどの責任を負わせることができます。お互いに動いていたとしても、逆走は重大なルール違反であるため、100:0で解決するケースも少なくありません。
「過失割合」が変わると何が起きる?
「割合なんてどうでもいい、痛い思いをしたくない」というのが本音ですが、この数字は「賠償金」に直結します。
例えば、車の修理費や治療費で100万円の損害が出たとします。
- 過失が20%なら:80万円相手から貰える
- 過失が50%なら:50万円しか貰えない(残り50万円は自己負担)
相手が逆走であれば、相手の過失割合を増やし、こちらの受取額を増やしたり、支払額を減らしたりする交渉が可能になります。
泣き寝入りしないための「証拠」が命
逆走事故で一番怖いのは、事故後に相手が「自分は逆走していない!そっちが真ん中を走ってきた!」と嘘をつくことです。
警察官が到着した時には、自転車は移動されており、どちらが逆走していたか証明できないケースが多々あります。
- 自動車の方
- ドライブレコーダーは必須です。
- 自転車の方
- 自転車用ドラレコをつけるか、事故直後に「相手が逆走していた位置」を含めてスマホで写真を撮ってください。目撃者の確保も重要です。
逆走車は「動く時限爆弾」
逆走自転車との事故では、相手の過失を問うことはできますが、車の場合は「無過失」にするのは至難の業です。
「逆走車を見つけたら、左に寄せて完全に止まる」
これが、過失割合の議論以前に、自分の身と財産を守るための最大の防御策です。理不尽ですが、相手がルールを破っている以上、こちらが二重に注意して回避するしかありません。
まとめ
逆走自転車との事故は、たとえ相手が一方的にルールを破っていたとしても、特に自動車側にとっては「無過失(0:100)」にするのが非常に難しい、リスクの高いトラブルです。
納得のいかない結果を避けるため、以下のポイントを必ず押さえておきましょう。
- 逆走は「著しい過失」
- 自動車との事故でも、逆走の事実は自転車側に10%〜20%の過失加算を求める強力な根拠になります。
- 自転車同士なら「正走」が圧倒的有利
- 左側通行を守っていた自転車同士の事故であれば、90%〜100%の責任を相手に問えるケースが多いです。
- 「客観的な証拠」が勝敗を分ける
- 現場で相手が嘘をつくリスクに備え、ドライブレコーダーの映像や事故直後の現場写真を必ず確保し、必ず警察を呼んで交通事故証明書を作成してください。
最も効果的な防衛策は、逆走車を見つけた瞬間に「左に寄せて完全に止まる」ことです。停止していれば、過失を最小限に抑え、自分の身を守ることができます。理不尽な「逆走」に遭遇しても、正しい知識と冷静な対応で、あなたの大切な生活と財産を守り抜きましょう。
本記事の執筆にあたり、損害保険会社が公開している過去の判例データ(別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」準拠)を参考にしています。
- 弁護士法人ALG&Associates:
- 車や自転車の逆走事故での過失割合は?事故のケース別に解説
- 自動車対自転車の事故において、逆走が5%〜20%程度の過失加算要素(修正要素)になることが詳しく解説されています。
- 三井住友海上:
- 自転車事故の過失割合
- 基本的な過失割合の考え方と、自転車側の著しい過失(右側通行など)があった場合の修正について記載されています。
- 弁護士法人(交通事故弁護士ナビ):
- 自転車事故の過失割合|事例別・修正要素も解説
- 自転車同士の正面衝突(一方が逆走)の場合、原則として逆走側に大きな過失がつく判例傾向が解説されています。

