KMCチェーンの選び方決定版!「DLC・SL・EL」の違いとは?グレード別の性能・重量・コスパを徹底比較
「チェーンをKMCに変えたいけれど、種類が多すぎてどれを選べばいいか分からない」 「11速用なのに5,000円から2万円まで価格差があるのはなぜ?」
シマノ純正からのアップグレードとして定番のKMC(ケイエムシー)。しかし、カタログに並ぶ「DLC」「SL」「EL」といったアルファベットの羅列に圧倒されてしまう方も多いはずです。この価格差の正体は、ズバリ「軽量化加工」と「コーティング(耐久性)」にあります。
本記事では、KMCチェーンのグレード階級(ヒエラルキー)を初心者にも分かりやすく解説。最高峰の決戦用モデルから、普段使いに最適なコスパ最強モデル、さらには室内トレーナー(ZWIFT)勢に必須の防錆モデルまで、あなたのライディングスタイルにぴったりの一本が見つかるガイドをお届けします。

一目でわかる!KMCチェーンのグレード階級表
KMCのチェーンは、主に以下の4つのグレード(サフィックス)で分類されています。上に行くほど高性能で高価です。
| ランク | グレード名 | 特徴 | おすすめユーザー |
| 最上位 | DLC | 超硬コーティング・中空ピン・肉抜き | 予算度外視のガチ勢・カラーカスタム |
| 上位 | SL (Super Light) | 中空ピン・プレート肉抜き | ヒルクライム・軽量化重視 |
| 中位 | EL (Extra Light) | プレート肉抜き(ピンは中実) | コスパと軽量化のバランス重視 |
| 標準 | X (Standard) | 肉抜きなし(基本モデル) | 練習用・通勤・耐久性重視 |
各グレードの詳細解説
ロードバイクやMTBのチェーン交換で、シマノ純正以外の一番人気といえば「KMC(ケイエムシー)」です。 しかし、KMCのチェーンには「DLC」「SL」「EL」など謎のアルファベットが多く、「結局どれを買えばいいの?」「高いやつと安いやつは何が違うの?」と迷いがちです。
① 王者の風格「DLC(ダイヤモンド・ライク・コーティング)」
- 構造: インナー/アウタープレート肉抜き + 中空ピン
- 特徴: その名の通り、ダイヤモンドに近い硬度を持つ特殊コーティングが施されています。摩擦抵抗が極限まで低く、耐久性も最強クラス。そして何より「黒×赤」「黒×青」などカラーバリエーションが豊富で、バイクのドレスアップ効果が絶大です。
- 価格: 非常に高価(1.5万〜2万円前後)
② 軽さの極み「SL(スーパー・ライト)」
- 構造: インナー/アウタープレート肉抜き + 中空ピン
- 特徴: DLCコーティングはありませんが、構造自体はDLCと同じ「全部入り」の軽量モデルです。ピンの中まで空洞にすることで、純正チェーンより数十グラムの軽量化を実現しています。ヒルクライム決戦用として人気No.1です。
③ コスパの優等生「EL(エクストラ・ライト)」
- 構造: インナー/アウタープレート肉抜き + 中実ピン(普通のピン)
- 特徴: プレートには穴が空いていて軽量化されていますが、ピンは普通の詰まった金属です。SLより少し重いですが、その分剛性感があり、価格も手頃。「見た目は肉抜きでカッコよくしたいけど、SLは高すぎる」という人に最適です。
④ 基本にして十分「Xシリーズ(無印)」
- 構造: 肉抜きなし
- 特徴: KMC独自の「X-Bridge(Xブリッジ)」という変速用の面取り加工は上位モデルと同じです。そのため、変速性能は非常に高いです。肉抜きがない分、泥詰まりに強く、耐久性も安定しているため、普段使いに最適です。
意外と知らない「EPT」って何?
グレード名の後ろに「EPT」とついているモデルがあります(例:X11-EPT)。 これは「Eco ProteQ(エコプロテック)」の略で、超強力な「防錆(サビ防止)コーティング」のことです。
- メリット: 650時間の塩水噴霧試験をクリアするほどサビに強い。
- おすすめ: 汗がしたたり落ちるZWIFT(室内トレーナー)ユーザーや、雨の日も走る通勤ライダーには、普通のチェーンよりEPT付きが圧倒的におすすめです。
どれを買うべき?
- 「とにかく愛車をカッコよく、速くしたい!」
- 迷わず DLC シリーズ。高いですが所有欲は満たされます。
- 「ヒルクライムで1gでも削りたい!」
- SL シリーズ。DLCより安く、軽さは同等です。
- 「純正より良くしたいけど、消耗品に1万は出せない…」
- EL シリーズ。これが一番バランスが良い「賢い選択」です。
- 「ズイフトで汗ビチャになる」
- EPT 加工モデル一択です。
KMCのチェーンはシマノ・カンパニョーロ・SRAMすべてと互換性があります(変速段数は合わせてください)。
- 変速性能: 実用上は問題ありませんが、純正チェーンの「吸い込まれるような変速」に比べると、若干のタイムラグや変速ショックを感じる場合があります。
- 相性問題: クランクやスプロケットの摩耗具合によっては、純正チェーンより駆動音が大きくなるケースがあります。
- 特殊規格: 特にSRAMの12速(Flat Top)を使用している場合は、必ず専用の対応モデルを選ぶ必要があります。通常の12速チェーンは使用できません。
【重要】「12速ユーザー」は特に注意!規格の落とし穴
「11速」までの時代はどのメーカーでも大差ありませんでしたが、「12速」以降は各社が独自の規格を採用しており、KMC製品を選ぶ際も注意が必要です。
「12速用なら何でもいい」と思って買うと、最悪の場合、歯飛びしたりチェーンが噛み込んだりします。以下のシステムを使っている方は、必ず対応表記を確認してください。
- SRAM AXS(ロード12速)ユーザー: SRAMのロード12速は「フラットトップ」という特殊形状です。通常のKMC 12速チェーンは使えません。必ず「SRAM 12s Road 対応」と明記された専用モデルを選んでください。
- シマノ 12速(HG+)ユーザー: シマノ12速は内側のプレートが拡張された特殊形状です。KMCのチェーンでも動きますが、シマノが誇る「ハイパーグライド+(負荷がかかっても変速する機能)」の性能は、KMCチェーンでは100%完全には再現できない場合があります。
「変速性能を0.1秒も落としたくない」「レースで勝つために機材を使っている」というシビアな場面では、メーカー純正チェーンの使用を強くおすすめします。
まとめ
KMCのチェーンは、単なる消耗品を超えた「走りを変えるチューニングパーツ」です。自分に最適なモデルを選ぶために、以下のポイントをおさらいしましょう。
- 最高性能とルックスを求めるなら「DLC」
- ダイヤモンド並みの硬度を誇る最強コーティング。カラーカスタムを楽しみたいガチ勢に最適です。
- 軽さを追求するなら「SL」
- ピンまで肉抜きされた究極の軽量モデル。ヒルクライムでの1gを削りたい決戦用に。
- コスパと性能のバランスなら「EL」
- プレートの肉抜きで軽量化しつつ、価格を抑えた「一番賢い選択」です。
- サビ対策なら「EPT」
- 驚異の防錆性能を誇り、ZWIFTでの汗対策や雨天走行に威力を発揮します。
どのグレードを選んでも、KMC独自の「X-Bridge」技術による鋭い変速性能を体感できます。愛車の変速段数(11速・12速など)をしっかり確認した上で、予算と目的に合った最高のチェーンを選び、軽やかなペダリングを手に入れましょう!
本記事は、KMC国内正規代理店およびグローバル公式サイトの情報を基に構成しています。
- KMC Chain Industrial(グローバル公式サイト):
- Product Categories
- 各グレード(DLC, SL, EL, EPT)の構造的な違い、重量データ、技術仕様(X-Bridge等)が掲載されています。
- 株式会社フタバ(KMC日本正規代理店):
- KMCチェーン 製品一覧
- 日本国内でのラインナップ、DLCコーティングの特性、EPT防錆技術についての解説があります。
- Cyclowired(シクロワイアード):
- KMC X11SL DLC カラーと性能を両立した最高級チェーン
- DLCコーティングの摩擦抵抗軽減効果や、プロチームへの供給実績についての詳細なレビュー記事です。




