体験記・考察など
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閉店ラッシュの裏側:「ロードバイク業界は悲惨」と言われる3つの構造的理由

みぞお
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「あそこも閉店したの?」 最近、ロードバイク乗りたちの間でそんな会話が増えています。

かつて「弱虫ペダル」ブームや、コロナ禍での「密を避ける移動手段」として活況を呈した自転車業界。しかし今、その反動とも言える「自転車ショップの閉店ラッシュ」「業界の悲鳴」が聞こえてきます。

なぜ、街の自転車屋さんは消えていくのか?なぜ、華やかだったロードバイク業界は今、「悲惨」と言われる状況にあるのか?

その背景にある、決して無視できない3つの構造的な理由を解説します。

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「コロナ特需」の強烈な反動と在庫の山

最大の理由は、皮肉にも過去数年間の「ブーム」そのものにあります。

「ブルウィップ効果」の直撃

コロナ禍において、世界中で自転車需要が爆発しました。 「自転車が足りない!」という状況に焦ったメーカーやショップは、通常では考えられない量の発注(オーバーオーダー)を行いました。

しかし、部品不足による納期の遅れが解消された頃には、世界的にブームは沈静化。 「客はもういないのに、大量の商品が入荷し続ける」という恐ろしい事態(ブルウィップ効果)が発生しました。

現状

多くのショップやメーカーが、定価では売れない過剰在庫を抱え、キャッシュフローが悪化。在庫処分のための「投げ売り」が横行し、利益を圧迫しています。

「ブルウィップ効果」について

お店でのわずかな売れ行きの変化が、問屋・工場へとさかのぼるにつれて、過剰な注文量へと増幅されてしまう現象

ムチの手元(消費者)を少し動かすと、先端(工場)が大きく暴れる様子に似ているため、こう呼ばれます。

  • 原因: 各業者が欠品を恐れて「念のため少し多めに」注文を積み重ねてしまうため。
  • 結果: 工場が必要以上に大量生産してしまい、在庫の山ができる。

初心者お断り?異常な「価格高騰」

ロードバイクの入り口が、あまりにも狭く、高くなってしまいました。

「105完成車」が買えない

数年前まで、初心者向けの「105(イチマルゴ)コンポ搭載のアルミロード」といえば、15万円前後が相場でした。しかし現在は、原材料費の高騰や円安の影響で、20万〜30万円することも珍しくありません。

影響

「ちょっと始めてみようかな」という新規層が完全に脱落。ハイエンドバイクを買う一部の富裕層やマニアだけで業界を回さなければならず、市場のパイが急速に縮小しています。

海外通販大手の破綻と「消耗品」ビジネスの崩壊

2023年末、サイクリストに衝撃が走りました。世界最大級の自転車通販サイト「Wiggle(ウィグル)」や「Chain Reaction Cycles(CRC)」を運営する親会社が経営破綻したのです。

実店舗から「利益」が消えた

これは海外だけの話ではありません。国内のリアル店舗(実店舗)は長年、こうした「海外通販」との価格競争に晒されてきました。 タイヤやチューブなどの消耗品を、ユーザーが安価なネット通販で買うようになった結果、実店舗は「一番利益率の良い物販」を失いました。

工賃だけでは限界

「修理工賃」だけで店舗を維持するのは困難です。さらに、最近のバイクはディスクブレーキや内装ケーブルなど構造が複雑化し、修理に時間がかかる割に工賃を上げにくいというジレンマも抱えています。

街の自転車屋特有の「後継者問題」

ロードバイク専門店だけでなく、ママチャリを扱う「街の自転車屋さん」も急速に姿を消しています。

高齢化と低収益

帝国データバンクの調査によると、自転車小売店の休廃業の多くは「店主の高齢化」と「後継者不在」です。

技術継承の断絶

儲からないビジネスモデルであることが若者に敬遠され、熟練の技術を持った店が一代限りで幕を閉じています。

まとめ:生き残るショップの条件

「ロードバイク業界は悲惨」と言われる現状ですが、すべての店が潰れているわけではありません。 生き残っているのは、単にモノを売るだけでなく、以下のような「体験」や「技術」を提供できるプロショップです。

  • フィッティングや洗車などの専門サービス
  • 初心者走行会などのコミュニティ作り
  • 他店購入車も受け入れる柔軟なメンテナンス体制

私たちは今、安さだけを追い求めるのではなく、「技術への対価」を正しく支払うことで、地元のショップを支える時期に来ているのかもしれません。

【根拠・参考情報】

本記事の執筆にあたり、以下のデータや報道を参考にしています。

  1. 帝国データバンク(TDB):
  2. 海外自転車メディア(Global Cycling Network / Cycling Weekly):
  3. シマノ(SHIMANO)決算資料:
  4. 経済産業省:
    • 「商業動態統計」
    • 国内の自転車販売額の推移データ。販売単価は上がっているものの、販売数量が減少傾向にあることが読み取れます。
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おっさんサイクリスト
自転車趣味歴だけは長いサイクリスト。レースは観戦するもので、自転車旅を楽しんでいます。西日本を中心に活動しています。
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