逆走自転車が突っ込んできた!回避の正解は「右」ではなく「左」?事故時の過失割合と自分を守る3つの防衛策
「車道を走っていたら、正面から自転車が逆走してきた!」 「避けようとしたら相手も同じ方向に動いて、正面衝突しそうになった…」
ドライバーや自転車利用者にとって、ルール無視の「逆走自転車(右側通行)」はまさに動く爆弾です。怒りを感じるのは当然ですが、実は避ける方向を間違えるだけで、あなたが加害者になったり、過失割合で不利になったりする恐れがあります。
本記事では、道路交通法に則った「逆走車に遭遇した際の正しい回避行動」と、万が一事故になった際の「驚きの過失割合」を徹底解説します。たとえ相手が逆走であっても、あなたが損をしないために知っておくべき法的リスクと、事故現場で絶対にすべき対応をまとめました。

そもそも「逆走」は犯罪です
まず大前提として、自転車は道路交通法上「軽車両」に分類されます。 原則として「車道の左側」を通行しなければならず、右側を通行することは「通行区分違反」という立派な違反行為です。
- 罰則: 3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金
- (道路交通法第17条第4項)
「自転車くらいで…」と思っている人が多いですが、警察の取り締まりは年々強化されており、2024年からは反則金(青切符)制度の導入議論も本格化しています。
逆走車に遭遇した時の「正解」の動き
あなたが正しい車線(左側)を走っているのに、正面から逆走自転車が来た場合、どう動くのが正解でしょうか?
① 絶対に「右(道路中央)」に避けない
これが最も重要です。逆走車を避けようとして道路の中央寄り(右側)にハンドルを切ると、対向車や後続車と衝突するリスクがあります。また、逆走自転車もパニックになって同じ方向(あなたから見て右)に避けることが多く、正面衝突の原因になります。
② 左に寄って「停止」する
相手が突っ込んでくる場合、最も安全なのは「左端に寄って、完全に止まること」です。 自転車同士の場合、あなたが止まっていれば、相手が避けてくれる確率は上がります。また、万が一ぶつかられても、あなたが「停止していた(速度ゼロ)」という事実は、後の過失割合の交渉であなたを守る強力な武器になります。
③ 目を合わせない(または手で合図する)
パニックになっている相手は、あなたの視線を追って突っ込んでくることがあります。あえて視線を逸らすか、手で「そっち(外側)へ行け」とジェスチャーをして、進路を指示するのも有効です。
もし事故になったら?過失割合の真実
「逆走してきた相手が悪いんだから、こっちの過失はゼロでしょ?」 そう思いたいところですが、日本の法律(判例)はそう単純ではありません。
ケースA:自動車 vs 逆走自転車
基本的に「車側」が交通強者となるため、たとえ相手が逆走であっても、車側の過失がゼロになることは稀です。 しかし、相手が逆走である場合、自転車側の過失が大きく加算(重過失)されます。
- 通常:車 80:自転車 20
- 逆走時:車 50〜60:自転車 40〜50
- ※状況により変動しますが、逆走は自転車にとって致命的な不利要素になります。
ケースB:自転車 vs 逆走自転車
正しく左側を走っていた自転車と、逆走自転車が衝突した場合。
- 過失割合:正走自転車 0〜10:逆走自転車 90〜100
- お互いが自転車の場合、ルール違反をしていた側の責任が極めて重くなります。あなたが左側走行を守り、かつ回避行動(停止など)をとっていれば、相手に100%の賠償を請求できる可能性が高まります。
事故後の対応:泣き寝入りしないために
逆走自転車との事故は、相手が無保険だったり、「痛くないから」と逃げようとしたりするケースが多いです。
- 必ず警察(110番)を呼ぶ
- 軽微な接触でも「交通事故証明書」がないと保険が使えません。
- 相手を逃さない
- 住所、氏名、連絡先を必ず交換してください。スマホで免許証や相手の自転車を撮影するのも有効です。
- ドライブレコーダーの確保
- 相手が「自分は逆走していない」と嘘をつく可能性があります。映像証拠が身を守ります。自転車用のドラレコも普及しています。
自分を守るために「止まる勇気」を
逆走自転車は、いわば「動く爆弾」です。 理不尽に感じるかもしれませんが、遭遇したら「張り合わずに左に寄って止まる」。これが、怪我のリスクと法的リスクを最小限にする唯一の防衛策です。
ルールを守っているあなたが損をしないよう、正しい知識とドラレコで自己防衛を徹底しましょう!
まとめ
逆走自転車との遭遇は、理不尽極まりない災難です。しかし、感情的に反応して「相手が避けるだろう」と過信したり、強引に突破しようとしたりすることは、怪我と法的責任の両面でリスクしかありません。
自分自身を守るための鉄則を改めて整理しましょう。
- 回避の基本は「左に寄って停止」
- 逆走車を避けようと右(中央寄り)に膨らむのは、対向車との衝突を招く最も危険な行為です。左端で「止まる」ことが、物理的にも法的にも最強の防御になります。
- 過失割合の真実を知る
- 自動車vs逆走自転車の場合、車側の過失がゼロになることは稀です。ただし、「自分は停止していた」という事実があれば、過失を大幅に抑える武器になります。
- 証拠の確保を徹底する
- 「逆走していない」という相手の嘘を防ぐため、ドライブレコーダーの設置は必須です。事故後は必ず警察を呼び、交通事故証明書を発行してもらいましょう。
ルールを守っているあなたが、ルールを破る者のせいで不幸にならないために。遭遇した際は「張り合わずに止まる勇気」を持ち、ドラレコなどの装備で自己防衛を徹底してください。
本記事の執筆にあたり、以下の法令および損害保険会社の判例解説を参考にしています。
- 警察庁(National Police Agency)
- 自転車は車のなかま〜自転車はルールを守って安全運転〜
- 自転車が軽車両であること、車道の左側通行が義務であること(右側通行の禁止)が明記されています。
- e-Gov 法令検索: 道路交通法
- 第17条第4項(車両は、道路の中央から左の部分を通行しなければならない)
- 第119条第1項第2号の2(通行区分違反に対する罰則:3月以下の懲役又は5万円以下の罰金)
- 損害保険会社による判例解説(過失割合):
- ソニー損保:自転車事故の過失割合
- チューリッヒ保険会社:自転車の逆走事故の過失割合
- 通常の事故に比べ、逆走(右側通行)の事実がある場合、自転車側の過失割合が著しく高くなる(修正要素となる)ことが解説されています。


