ロード世界選手権2026の調整ルートまとめ:ポガチャルやトップ選手たちの選択
カナダ・モントリオールで開催される2026年のロード世界選手権が近づき、各国のトップ選手たちの調整プランが明らかになってきました。
長年、世界選手権に向けた最高の調整舞台とされてきたのが、時期の近いグランツール「ブエルタ・ア・エスパーニャ」です。しかし近年は、世界選手権と同じカナダで開催されるワンデーレース「GPケベック」「GPモントリオール」の2連戦を最終調整に選ぶ選手が増加傾向にあります。
本記事では、海外メディア『Cyclingnews』のまとめをもとに、タデイ・ポガチャル選手やレムコ・エヴェネプール選手をはじめとする各国の有力候補たちが、「ブエルタ」と「カナダ」のどちらの調整ルートを選択したのか、そして過去の世界王者たちはどのようなアプローチで虹色のジャージを獲得してきたのかを紹介します。
世界選手権本番の行方を占う参考としてご覧ください。
【世界選手権】トップ選手たちはブエルタとカナダ、どちらを選んだのか
モントリオール(カナダ)開催の2026年世界選手権ロードレースに向けて、男子トップ選手たちの調整プランが出揃いつつあります。ブエルタ・ア・エスパーニャの日程が8月〜9月に移ってからおよそ31年間、このグランツールは世界選手権に向けた「最高の調整レース」と見なされてきました。しかし近年は状況が変わり、カナダで開催されるワンデーワールドツアーレース「GPケベック」「GPモントリオール」を選ぶ選手も増えています。
- ポガチャル選手・ロブリッチ選手はブエルタで調整、大会後モントリオール入り
- エヴェネプール選手・ファンデルプール選手・シェイシャス選手らはカナダ2連戦を選択
- 過去の傾向では、ブエルタ出場組より「軽めのレース選択」組の方が近年のロードレース優勝者に多い
- 個人タイムトライアルは特にブエルタとの相性が悪く、直近でブエルタ経由の優勝者は2018年のローハン・デニス選手のみ
ブエルタ経由かカナダ経由か ― 2つの主流ルート
世界選手権がモントリオールで開催される今年は、地理的にも時差の面でも気候の面でも好条件が揃うカナダの2つのワンデーレースが、調整の「仕上げ」として理想的に見えます。2レースの間には約2週間の余裕があり、休養・トレーニング・コース確認の時間も確保できます。
一方でブエルタ・ア・エスパーニャは、21日間にわたる全く異なる挑戦です。今年のコースは総距離3,308.8km、獲得標高58,000m超という非常にタフな設定。豊富なレース経験によって調整したいタイプの選手には理想的で、大会終了から世界選手権まで、大西洋を越えて移動し休養・準備する時間も十分に確保されています。
過去の優勝者たちはどう調整してきたか
新型コロナの影響を受けた2020・2021年、そして8月開催だった2023年は例外として除くとしても、近年は「ブエルタを走ってから世界選手権を制する」という組み合わせは明確に減少傾向にあります。とはいえ興味深い例もあります。2011年、マーク・カヴェンディッシュ選手はブエルタに出走したもののステージ4でリタイア、その後ツアー・オブ・ブリテンを走ってから虹色のジャージを手にしました。世界選手権3勝を誇るペーター・サガン選手も、現在の「ルヌーヴィ・ツアー」を好んで走り、2度の優勝の前に出場しています。
サガン選手はカナダのレースを選んだこともありますが、初優勝となった2015年は、ブエルタを8日間走り1ステージ優勝を挙げた後に世界チャンピオンとなりました。近年の優勝者の中でも異色の調整だったのが、2019年のマッツ・ペダーセン選手。ドイチュラント・ツアーといくつかのワンデーレースを走ってから虹色のジャージを獲得しています。もっとも本人は、今年の世界選手権については「自分の手には届かないだろう」と話しているとのことです。
個人タイムトライアルについても同様の傾向があり、同じ期間の優勝者のうちブエルタ経由だったのはわずか6人。直近では2018年のローハン・デニス選手が最後の例となっています。
各国トップ選手の調整プラン一覧
| 国・選手名 | 調整プラン |
|---|---|
| タデイ・ポガチャル(スロベニア) | ブエルタ・ア・エスパーニャでグランツール三冠に挑戦 |
| プリモシュ・ロブリッチ(スロベニア) | ポガチャル選手のアシストとしてブエルタに出走 |
| マチュー・ファンデルプール(オランダ) | ツール後、レ・ジェのMTBワールドカップ(XCO2位)を経て、世界選手権はトレーニングキャンプで調整 |
| イサック・デル・トロ(メキシコ) | ドイチュラント・ツアー(プロローグ優勝)を経て、カナダ2連戦を予定 |
| レムコ・エヴェネプール(ベルギー) | ドノスティア・サンセバスティアン・クラシカ優勝後、カナダ2連戦で調整 |
| ワウト・ファンアールト(ベルギー) | ブエルタ・ア・エスパーニャを選択、世界選手権前最後のレースに |
| マイケル・マシューズ(オーストラリア) | 例年通りカナダ2連戦(ケベック3勝の実績あり) |
| ジェイ・ヴァイン(オーストラリア) | 負傷明けでブエルタに出走中 |
| クイン・シモンズ(米国) | リードビル・トレイル100 MTB→フィラデルフィア・サイクリング・クラシック→カナダ2連戦という異例のルート |
| マティアス・スケルモーセ(デンマーク) | ツール・ブエルタ二重出走、ブエルタ終了から世界選手権まで2週間 |
| ポール・シェイシャス(フランス) | カナダ2連戦が世界選手権デビュー前の初レースに |
| ジュリオ・チッコーネ(イタリア) | カナダ2連戦を選択 |
| アルベルト・ベッティオル(イタリア) | 例年通りカナダ2連戦 |
| トム・ピドコック(英国) | ツール・ド・フランス(総合9位)以来のレースとしてカナダ2連戦 |
| フアン・アユソ(スペイン) | 母国開催のブエルタを回避し、カナダ2連戦を選択 |
| ユーゴ・ウール(カナダ) | 地元開催だが、所属チームの意向でブエルタに出走 |
本命候補たちのプラン詳細
タデイ・ポガチャル選手(スロベニア)
現在ブエルタ・ア・エスパーニャに出走中で、グランツール三冠(ジロ・ツール・ブエルタ制覇)を狙う立場です。もし世界選手権を制せば3年連続の優勝となりますが、過去2度の優勝はいずれもカナダのレースを経ての結果でした。今年のブエルタは非常にタフな設定で、圧巻のツール・ド・フランス制覇の直後だけに、チーム自身も「簡単な勝利にはならない」と認めています。アシスト役のロブリッチ選手も同じくブエルタに出走中です。
レムコ・エヴェネプール選手(ベルギー)
タイムトライアル・ロードレースの両方で優勝経験があり、モントリオールでも最有力候補の一人。ツール・ド・フランス以降はドノスティア・サンセバスティアン・クラシカに出走したのみで、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュからツール・ド・フランスまでの2か月間をノーレースで過ごすなど、集中したトレーニング期間で結果を出すタイプであることが今年証明されています。今回もカナダ2連戦で調整を仕上げる予定です。2022年のロードレース優勝時はブエルタを走って優勝した直後でしたが、直近2度のタイムトライアル制覇は、比較的軽めのツアー・オブ・ブリテン出走後だったとのことです。
ワウト・ファンアールト選手(ベルギー)
エヴェネプール選手の調子次第では、ベルギー代表のもう一つの優勝候補として名前が挙がります。世界選手権の常連というわけではなく、直近の出場は2023年グラスゴー大会。今回は世界選手権前最後のレースとしてブエルタを選んでいます。
マチュー・ファンデルプール選手(オランダ)
2023年世界チャンピオンで、5,000m超の獲得標高だった2025年大会を欠場した後の今年、カムバックを果たします。ツール・ド・フランス完走(最終日パリでの劇的勝利を含む)後、MTBに転向してレ・ジェでのUCIワールドカップに出場し、XCOで2位、クロスカントリー・ショートトラックで11位という結果を残しています。MTB世界選手権を除けば、ロード世界選手権前に他のレース出走予定はなく、トレーニングキャンプでの調整が見込まれています。
イサック・デル・トロ選手(メキシコ)
これまで世界選手権の優勝候補としてあまり名前が挙がることのなかったメキシコですが、UAEチームエミレーツでチームメイトのポガチャル選手のために働く立場から解放され、自身のために自由に走れる世界選手権では大きな脅威になりそうです。22歳のデル・トロ選手にとって昨年がエリートカテゴリーでの世界選手権デビュー戦で、7位という結果でした。当時はブエルタ・ブルゴスで優勝後、欧州のワンデーレース7戦(うち4勝)を走って調整。今年はドイチュラント・ツアーでプロローグ優勝を果たしており、日程はまだ確定していないものの、世界選手権前はカナダのワールドツアーレースを走るとみられています。
その他の注目選手
オーストラリア
マイケル・マシューズ選手は例年、カナダのレースとの相性が良く、ケベックで3勝を挙げるなど鉄板の選択肢。2022年の世界選手権3位も、カナダでの好調な走りを経てのものでした。クライマー陣ではジェイ・ヴァイン選手が負傷に苦しみながらも現在ブエルタに出走中。ジェイ・ヒンドリー選手、ベン・オコナー選手、マイケル・ストーラー選手のカナダ出走は現時点で未確定です。
米国
現時点で唯一出場が確定しているのはクイン・シモンズ選手。近年、世界屈指の安定感と対応力を誇る選手へと成長しています。今年は異例のルートを選択しており、リードビル・トレイル100 MTBを走った後、復活したフィラデルフィア・サイクリング・クラシック、そしてカナダのワンデーレース2戦という組み合わせで調整します。マット・ヨルゲンソン選手の世界選手権出場については、ツール・ド・フランス、ドノスティア・サンセバスティアン・クラシカ以降レースから離れており、シーズン終盤の目標としてイル・ロンバルディアを掲げていることもあり、現時点では不透明です。
デンマーク
2019年世界チャンピオンのマッツ・ペダーセン選手を擁する近年の強豪国ですが、今年ペダーセン選手・ヴィンゲゴー選手ともに出場しない見通しです。代わりに軸となりそうなのがマティアス・スケルモーセ選手。今年のキガリ世界選手権で4位に入っていますが、ツール・ブエルタの二重出走に挑んでおり、3週間のブエルタ終了からロードレース本番まではわずか2週間という日程です。
フランス
19歳の逸材、ポール・シェイシャス選手は、昨年ツール・ド・ラヴニール優勝を経てルワンダへ向かい、エリートカテゴリー初出場で13位という結果を残しました。今年はカナダ2連戦(GPケベック・GPモントリオール)が世界選手権前初レースとなる予定。もし優勝すれば、史上最年少(20歳と3日)のロード世界チャンピオンとなります。レニー・マルティネス選手、ロマン・グレゴワール選手、ブノワ・コニェフロワ選手も候補に挙がっていますが、出走レースは未確定です。
イタリア
攻撃的な走りが持ち味のジュリオ・チッコーネ選手は、昨年ブエルタでのステージ上位フィニッシュを重ねた後にルワンダで6位。今年はカナダ2連戦を選択しています。アルベルト・ベッティオル選手も世界選手権でトップ10入りを2度果たしている実力者で、例年通りカナダのレースに出走予定。優勝経験こそ多くないものの、勝つ時は大きなタイトルを獲得するタイプの選手です。
英国
トム・ピドコック選手が英国代表の主力候補です。自己ベストは2021年6位、昨年10位で、いずれもブエルタ出走後の結果でした。今年はツール・ド・フランス以来のレースとしてカナダ2連戦を選択しています。
スペイン
本命候補の多くがカナダを選ぶ中、フアン・アユソ選手も母国開催のブエルタではなくカナダ2連戦を選択しています。昨年のエリート世界選手権8位が自己ベストで、その年はブエルタで不調だった後の結果でした。エンリク・マス選手、イバン・ロメオ選手、パブロ・カストリージョ選手ら他のスペイン勢は現在ブエルタ・ア・エスパーニャに出走中です。
カナダ
地元開催という特別な世界選手権を、モントリオール近郊出身のユーゴ・ウール選手は地元でのレースではなく、所属チーム(アルペシン・プレミアテック)の指示でブエルタに出走する形で迎えます。デレク・ジー=ウェスト選手は今月末フィラデルフィア・サイクリング・クラシックに出走予定。現役復帰を果たしたマイケル・ウッズ選手はプロレースには出走せず、トレーニングのみで調整するとのことです。
まとめ
「ブエルタ経由」か「カナダ経由」か、あるいは全く別のルートか ― トップ選手たちの調整プランには、それぞれのチーム事情やコンディション、過去の経験が色濃く反映されています。9月末に迫るモントリオール世界選手権、どの調整プランが結果につながるのか注目です。
- Owen Rogers, “La Vuelta, Canada, or elsewhere – Where are the men’s stars riding in preparation for the Road World Championships?”, Cyclingnews, 2026年8月24日
