途上国支援自転車「バッファロー」が刷新。ディスクブレーキ搭載の新型モデル詳細
途上国で教育や医療、仕事へのアクセスを支援する非営利団体「World Bicycle Relief(WBR)」が、新型の支援用自転車「Buffalo One」と「Buffalo Pro」を発表しました。
本記事では、海外の自転車メディア『BikeRadar』の報道をもとに、現地の声を反映して刷新された2サイズ展開やディスクブレーキの採用、独自の2速ドライブトレインなど、耐久性と整備性を大きく向上させた新モデルの仕様について客観的に解説します。
また、自転車の所有が現地の人々の所得や生活水準向上にどのような効果をもたらしているかを示すデータについてもあわせて紹介します。
バッファローは絶対に裏切らない
教育・仕事・医療へのアクセスを支援する非営利団体「World Bicycle Relief(WBR)」は、これまでに100万台の「バッファロー・バイク」を届けてきた。今週発表された新モデルについて、同団体の製品開発担当バイスプレジデント、アンドリュー・サムウェイズ氏は「私たちにとって重要な一歩」だと語る。
WBRはジンバブエ・ケニア・ザンビアの現地フィールドチームから3名をメインチームに迎え入れた。これにより、実際にバイクを使う人々の声を、より的確に設計判断へ反映できる体制が整ったという。

- 新モデル「Buffalo One」「Buffalo Pro」は、現地フィールドチームとの協働により設計
- 標準・大型の2サイズを新たに展開、積載重量は100kgまで対応
- 両モデルにフロントディスクブレーキを搭載、Proはリアもディスク化
- 寄付時の現在の価格は、Buffalo Oneが約29,800円、Buffalo Proがそれよりおよそ3,200円高い約33,000円
- ザンビアでの調査では、自転車のある世帯は所得が43%高いという結果も
※価格は英国での参考価格をもとに、2026年9月時点のレート(1ポンド=約216円)で円換算した参考値です。
「私はこのバイクの顧客ではない」― 現場主導の設計思想
サムウェイズ氏は、自身がこのバイクの利用者ではないことを強調する。「私の役割は、実際に使う人々と、作る側の人々との対話を促すことだった」。設計の責任を組織内の「川下」、つまり現地スタッフへと委ねることで、ドイツにいるWBRチームがバイクを設計するのではなく、組織内で育ってきた現地の人々との協働プロセスへと変わったという。
この結果生まれたのが、新型「Buffalo One」と「Buffalo Pro」だ。2024年に発売された「Buffalo Utility S2」と共通点を持ちながらも、複数のアップデートにより、より長持ちし、より多くの荷物を積載でき、より整備しやすい仕様になっているという。

現場での観察から生まれた「2サイズ展開」
新モデルで加えられた変更の多くは、WBRの自転車が実際にどう使われているかを観察した結果に基づいている。「現地スタッフのメリットは、現地の言葉を話し、ライダーとより直接的に対話できることだ。観察、聞き取り、試行、そして人々の反応を見ることを通じて、こうした理解を積み上げていく」とサムウェイズ氏は説明する。
きっかけとなったのは、ケニアでの2つの観察だった。一つは、背の高い男性が自分のバッファロー・バイクを使っている様子。「彼はそれに十分満足していたが、あまり快適そうには見えなかった」とサムウェイズ氏。高くしたサドルのせいで、後部の積載スペースも狭くなっていた。もう一つは、孫のための子供用自転車を探しているという女性との会話だった。「子供用自転車が答えとは限らないと気づいた。むしろ子供がもっと快適に私たちのバイクに乗れるようになれば、それはずっと価値のあることになる」。
この気づきから、小さいサイズのジオメトリーを見直し、サドルをより低くできるようシートポストの強度を改善する取り組みにつながった。これにより、「乗り換える」子供用自転車ではなく、「一緒に成長できる」バッファロー・バイクを提供できるようになったという。背の高い男性に新しい大きめサイズを渡したところ、すぐに気に入り、最終的には手放したがらなかったとサムウェイズ氏は振り返る。「誰かが『返したくない』と思ってくれたなら、それは追求する価値のあるものだという証だ」。
ディスクブレーキとスレッドレスヘッドセットの採用

新型「Buffalo One」「Pro」のもう一つの特徴がディスクブレーキだ。従来のバッファロー・バイクはハブブレーキを採用していたが、ディスクブレーキを試したテストライダーたちは、もう手放したくないと感じたという。現在は両モデルともフロントに機械式ディスクブレーキを搭載し、Proはデュアルディスク仕様となっている。

ディスクブレーキは、新たに100kgとなった積載重量に対応する制動力を提供する一方、ハブブレーキと同様、リムを摩耗させず、スポークが折れても使用を続けられるという耐久性・信頼性の面でのメリットもあるという。新モデルはヘッドセットもスレッドレス方式へと移行しており、これは修理に必要な工具が少なく済むという利点に加え、サプライチェーンの安定性や業界全体の動向も踏まえた判断だとサムウェイズ氏は説明している。
2本チェーンの変速機構、あるいはシングルスピード

従来のバッファロー・バイクはシングルスピード(変速なし)だったが、2024年発売の「Utility S2」で初めて2本チェーンの機構が採用された。SRAMと共同開発されたこの独自システムは、ケーブルやディレイラーを使わずに追加のギアを実現するもので、複雑さや故障のリスクを抑えられる。もう一つの利点は、片方のチェーンが切れても、もう一方でペダリングを続けられる点だ。変速はペダルを半回転分逆回転させるだけというシンプルな操作になっている。
- Buffalo Pro:2本チェーンの改良版ドライブトレイン(2速)を採用
- Buffalo One:従来通りシングルスピードを維持
- シングルスピードは今も最も手頃な価格帯を実現する仕様で、両モデルともこの選択肢を用意
- 後からシングルスピードを2速ドライブトレインへアップグレードすることも可能
バッファロー・バイクを寄付する場合の現在の価格は、Buffalo Oneが138ポンド(約29,800円)、Proはそれよりおよそ15ポンド(約3,200円)高い設定だという。この価格は、製造・輸送・組み立て・流通にかかる実費を反映したものであり、実際に店頭で販売される際の価格は国によって異なるとのことだ。
投資対効果 ― 「所得43%増」という調査結果

「私たちの店に自転車を買いに来る人々は、最も安いバイクを求めているわけではない。手が届く価格である必要はあるし、私たちも可能な限りコストを切り詰め、効率化を図っている。しかしバッファローは、絶対に裏切らない一台だ」とサムウェイズ氏は語る。
- 自転車がもたらす投資対効果は14.7倍、開発支援策の中でも最も効果の大きい部類に
- 自転車のある世帯は、ない世帯と比べて所得が43%高い
- 自転車を持つ個人は、医療へのアクセス確率が36%高い
サムウェイズ氏は、2本チェーンのドライブトレインが実際にある人物の生活をどう変えたかという具体例も紹介している。パンを配達する仕事をしていたある男性は、この機構の実用性と信頼性のおかげで、より速く、より遠くまで移動できるようになり、事業を倍の規模にまで拡大できたという。「私たちエンジニアやデザイナーにとって、これこそまさに聞きたかった言葉だ」と同氏は語っている。
まとめ
現地の声を丁寧にすくい上げながら設計を重ねてきた今回の新モデルは、単なる製品アップデートにとどまらず、教育・仕事・医療へのアクセスという、自転車が持つ本来の力を改めて示す事例と言えそうだ。ディスクブレーキやスレッドレスヘッドセットといった技術トレンドが、こうした支援活動の現場にも着実に浸透してきていることがうかがえる。
- Stan Portus, “‘The Buffalo won’t let you down’: World Bicycle Relief’s latest bikes are designed to last longer, carry more and be easier to maintain”, BikeRadar, 2026年9月16日
