「またか…」80kmの壁に砕け散った僕が、“補給の呪い”から解放された日の話。

最高の天気、最高の仲間、最高のコース。 なのに、僕の心だけが、どんよりと曇っていく。
メーターが「80km」を指した途端、さっきまでの高揚感が嘘のように消え去り、体に異変が起きる。 ペダルが、鉛のように重くなる。 頭がフワフワして、視界が白んでいく。
ポケットに詰め込んだジェルを流し込む。 でも、それは焼け石に水。 一度止まった脚は、もう二度と、力強く回ることはなかった。
「なんで俺だけ、いつもこうなるんだ…?」
補給はちゃんとしてるはずなのに。 練習だって、ちゃんとしてるはずなのに。 仲間たちの背中が、どんどん小さくなっていく。
もしあなたが今、昔の僕と同じように「80kmの壁」の前で何度も膝をつき、補給の失敗で心が折れているなら。 この記事は、あなたのためのものです。
これは、僕が「ハンガーノック」という悪夢から解放され、100km先の景色を笑顔で見られるようになった物語です。
なぜ、あなたの補給は「失敗」するのか?
僕もずっと、大きな勘違いをしていました。 「パフォーマンスが落ちるのは、エネルギーが足りないからだ。だから、もっと食べなければ」と。
だから、ライド前には大盛りのパスタを食べ、ポケットは補給食でパンパンにした。 でも、結果はいつも同じ。80kmの壁。
その理由は、僕の体が燃費の悪い『ガソリンエンジン』に乗り続けていたからなんです。
このエンジンは、糖質という「ハイオクガソリン」しか燃料にできません。 パワーは出るけど、すぐガス欠になる。 僕らの体に蓄えられる糖質なんて、たったの1〜2時間で空っぽになってしまう、小さな小さなガソリンタンクなんです。
いくら外からジェルや羊羹で給油したって、しょせんは応急処置。 ロングライドという長距離レースを、小さなガソリンタンクだけで走り切ろうとすること自体が、無謀な挑戦だったのです。
100kmを余裕で走る人が持つ「巨大な予備タンク」の正体
一方で、涼しい顔で100km、150kmと走り続ける仲間たち。 彼らは、僕とは違うエンジンを積んでいました。
それが、静かでパワフルな『ディーゼルエンジン(脂質エンジン)』です。
このエンジンは、僕らの体にたっぷりと蓄えられている「体脂肪」を燃料にして、どこまでも走り続けることができます。 そう、僕らが普段「邪魔だな」としか思っていない体脂肪こそ、ロングライドにおいては「最強で、ほぼ無限の予備タンク」なんです。
- 燃費が圧倒的に良いから、頻繁な給油(補給)が必要ない。
- エネルギーが安定供給されるから、急なパワーダウンが起きない。
- 自分の脂肪を燃やしてくれるから、ライド自体が最高のトレーニングになる。
僕らが目指すべきだったのは、補給の回数や量を増やすことじゃなかった。 今乗っている燃費の悪い『ガソリンエンジン』と、パワフルな『ディーゼルエンジン』を切り替えられる、ハイブリッドな体に作り変えることだったんです。
僕の体質を変えた、ライド前後の「賢い一手間」
「でも、どうやってそんな体に?」
その“鍵”は、日常とライド中の、ほんの少しの工夫にありました。
① 日常で積む“エンジンオイル”『MCTオイル』
ディーゼルエンジンを叩き起こすために、僕は毎朝のコーヒーに『MCTオイル』をスプーン1杯加えるようにしました。 MCTオイルは、体に「脂肪を燃やしてエネルギーにするって、効率いいだろ?」と思い出させてくれる、特別なアブラ。 これを続けることで、僕の体は少しずつ、「脂肪を燃やす」ことが得意な体質に変わっていきました。
投稿者が使っている手に入れやすく使いやすいMCTオイル
② ライド中に使う“安定燃料”『ゆっくり燃える補給食』
そして、ライド本番。血糖値を急激に上げる甘いジェルをやめ、お餅やナッツバーのような「ゆっくり吸収される糖質と、良質な脂質」が入った補給食に切り替えました。 急激な血糖値の上昇を抑えることで、『ガソリンエンジン』の無駄遣いを防ぎ、『ディーゼルエンジン』が働きやすい環境を維持するためです。
この2つを始めただけ。 それだけで、次の100kmライドで、僕は初めて「80kmの壁」を、壁だと感じずに通り過ぎることができました。
欲しかったのは、大量の補給食じゃない。 “自分の体を、自分の力でマネジメントできる”という自信と知識だったんです。
まとめ:もう「ハンガーノック」に怯えるのは、終わりだ
もし、あなたが今も「補給失敗」の恐怖に囚われているなら、思い出してください。 それは、あなたの練習不足でも、根性不足でもありません。 ただ、誰も「エンジンの作り方と、その使い方」を教えてくれなかっただけなんです。
- パフォーマンスが落ちる理由: 燃費の悪い『ガソリンエンジン』に頼り切っているから。
- 改善策: 日常から『ディーゼルエンジン(脂質エンジン)』を鍛え、ライド中は急激な血糖値上昇を避ける。
もう、ジェルを詰め込むだけのお守りや、いつ来るか分からないハンガーノックに怯えるのは、終わりにしましょう。 あなたの体には、どこまでも走り続けられる、最強のエンジンが眠っています。
さあ、そのエンジンに火を入れて、今まで見たことのなかった100km先の景色を、見つけに行きませんか?
参考記事:「糖質疲労」
疲れが取れないのは“糖質疲労”のせい?現代人に必要なエネルギー補給の新常識
