【海外ニュースまとめ】シマノが新型ペダル「SPD-SLR」を正式発表。20年ぶりの刷新による変更点
シマノが、ロードバイク用ペダルおよびクリートのシステムを20年ぶりに刷新した新規格「SPD-SLR」を正式に発表しました。
2003年の登場以来、長らく業界標準として定着していた「SPD-SL」から大きく舵を切り、スタックハイトの低減や軽量化、そしてクリート側の前後方向調整機能の廃止といった新たなアプローチが採用されています。
本記事では、海外自転車メディア『Cyclingnews』の報道をもとに、新型デュラエース・アルテグラペダルや新型シューズ「S-Phyre RC910」のスペック、そして気になる旧型システムとの互換性について客観的に整理して解説します。
Cyclingnewsの記事(正式発表レポート)をまとめました。
シマノ、新型ペダル「SPD-SLR」を正式発表

シマノが本日、ペダルへのクリップイン方式を刷新する新製品群を発表した。2003年の発明以来、実に20年以上にわたり基本設計を維持してきたロード用クリート「SPD-SL」から、初めて大きく舵を切る内容となる。
発表されたのは、デュラエース・アルテグラ両グレードの新型ペダル、4種類の新型クリート、そしてトップグレードシューズ「S-Phyre」の刷新という3本柱。シマノはこの刷新により、スタックハイト(ペダル軸から足裏までの高さ)の低減、より自然な足の収まり、軽量化、調整のシンプル化といった複数のメリットが得られるとしている。
- 新型クリート「CL-SL120」は薄型・軽量化、前後方向の調整機能を廃止(左右への可動は維持)
- 新型ペダル「デュラエースPD-R9300」「アルテグラPD-R8200」を発表、ペダル+クリートで最大2.3mmのスタックハイト低減
- 新型シューズ「S-Phyre RC910」はクリート穴を長溝化し、前後調整機能をソール側に移設
- 公式には「後方互換性なし」とされるが、新クリートは旧型ペダルに物理的には装着可能とのこと(逆は不可)
- 価格は旧モデルより値下げ:デュラエースペダル約43,200円(旧モデル約51,800円)など
※価格は英国・欧州での参考価格をもとに、2026年9月時点のレート(1ポンド=約216円、1ユーロ=約185.7円)で円換算した参考値です。
以前の記事でお伝えした「目撃情報」が現実に
今回の発表は、半年前にプロトタイプ版のペダルがヤスパー・フィリプセン選手(アルペシン・プレミアテック)のバイクでパリ〜ルーベ直前に目撃されていたことの正式な答え合わせとなった。当時はその後方互換性のなさが、同レースでのマチュー・ファンデルプール選手のレース展開に影響を及ぼしたとも報じられていた。また、以前の記事でお伝えした通り、新型デュラエースグループセット(R9300)もブエルタ・ア・エスパーニャで目撃されたばかりであり、シマノにとって多忙な時期が続いていることがうかがえる。

新型クリート「CL-SL120」― 薄く、軽く、そして「調整はソールで」
今回の発表の中核となるのが、新型クリート「CL-SL120」だ。既存モデルより薄型・軽量化され、クリートとボルトの間に挟まっていた長方形のワッシャーが廃止された。これにより前後方向の調整機能は失われたが、左右方向への可動(フロート)は従来通り確保されている。
- 赤:フィックス(フロート0度)
- 青:フロート1度
- 黄:フロート3度
- グレー:フロート3度+長方形ワッシャーを復活させ、追加調整に対応(ただしスタックハイト低減効果は失われる)
興味深いのは、デュラエースペダルに標準同梱されるクリートの色が、従来の青から黄に変更されたことだ。重量面では、金属ワッシャーの廃止により新型クリートは16g軽量化され、55gとなっている。

新型ペダル「デュラエースPD-R9300」「アルテグラPD-R8200」
ペダル本体も上位2グレードが刷新された。なお型番が「PD-R8200」であることから、新型アルテグラグループセットの存在も同時に裏付けられた形だ(現行アルテグラの型番は「R8100」)。
主な変更点は、ペダルとクリートの接続角度だ。従来モデルは垂直から15.5度傾いた状態で静止していたが、新型はより垂直に近い10.5度に。これにより足を踏み込んだ際にクリートを「捉える」面積がわずかに広がり、クリップインに必要な回転角度も5度少なくて済むという。シマノの担当者によれば、スプリントや登坂でペダルを引き上げる際に生じがちな、ペダルとクリートの間のわずかなガタつき・たわみも軽減され、より確実に接続されている感覚が得られるとのことだ。
- デュラエース:228g→227g(新型、わずか1g減)
- アルテグラ:248g→228g(新型、20g減)
- 両者の違いはベアリング。デュラエースはクランクに近い側により大型のベアリングを採用し、剛性が高く回転抵抗も少ない
スタックハイトは最大2.3mm低減
クリートとの組み合わせで得られる最大の効果が、スタックハイト(ペダル軸から足裏までの距離)の2.3mm低減だ。わずかな差ではあるが、シマノはこれによりバイクとの一体感が向上するとしている。スタックハイトはバイクフィッティングやライディングポジションにも影響し、場合によっては空力性能にも関わってくるが、記者は2.3mm程度の差でどれだけの効果が得られるかについては懐疑的な見方も示している。

- デュラエース:12.5mm
- アルテグラ:13.3mm
- 新型S-Phyreシューズ併用でさらに0.7mm減(ただし新シューズの使用は必須ではない)
- 参考:Wahoo Speedplayペダルは公称8.5mm(ただし4ボルト対応シューズが必要)
新型シューズ「S-Phyre RC910」
新型ペダルと合わせて発表されたのが、フィリプセン選手が今夏使用していたことでも話題になったトップグレードシューズ「S-Phyre RC910」だ。同モデルを履いた状態で、片方だけ未発表モデルという奇妙な組み合わせでクラシックレースを制した場面もあった。シマノはこれまで900番台のモデルナンバーを小刻みに更新してきたが(RC901→RC902→RC903)、今回は一気に「RC910」へと大きく数字を進めており、それだけ本気度の高いモデルであることがうかがえる。
近年のトレンドである幅広ラストを採用し、新開発の「Dynalast 2.0」技術によりつま先部分を3mm、母指球部分を2mm拡幅。ワイド・ナロー両方のバージョンも用意される。SPD-SLRとの関連で最大のポイントは、クリート固定用ナットを収める溝が長く設計され、クリート自体では失われた前後方向の調整機能を、シューズ側で補う形になっている点だ。

気になる互換性は? ― 「非公式には片方向のみ可能」
新旧クリート・ペダルの互換性
シマノの公式見解は「後方互換性は一切なし」。しかし記者が非公式に確認したところ、新型クリートは技術的には旧型のSPD-SLペダルに装着可能(実際に試して確認済み)とのことだが、逆に旧型のSPD-SLクリートは新型ペダルには装着できないという。とはいえ、シマノの公式なアドバイスに従うことが推奨される。
新型クリートは、他社製も含め一般的な3ボルトシューズとの互換性自体は維持されている。ただしクリート自体の前後調整機能が失われたため、シューズのソール側に十分な調整幅があるかどうかがカギになる。極端に前寄り・後ろ寄りのクリート位置を好み、これまで長方形ワッシャーに頼っていた場合は、対応に苦労する可能性がある。追加の調整幅が欲しい場合はグレーのクリートを使う手もあるが、そこまでするなら従来のSPD-SLを使い続けるのも一つの選択肢だ。すべてのシューズブランド・モデルでクリート穴の位置や調整幅が異なるため、既存シューズに新型クリートを装着したい場合は、実際に試してみるのが確実とされている。
価格 ― 意外にも「値下げ」
- デュラエースペダル:約43,200円(199.99ポンド/229.99ユーロ)
- ※旧モデルは約51,800円(239.99ポンド)
- アルテグラペダル:約30,200円(139.99ポンド/160.99ユーロ)
- ※旧モデルは約34,600円(159.99ポンド)
- クリート(全種類):約5,400円(24.99ポンド/28.99ユーロ)
- ※旧モデルは約4,800円(21.99ポンド)とやや値上げ
- 新型S-Phyre RC910シューズ:約84,200円(389.99ポンド/449.99ユーロ)
シマノ製ペダル・クリートは実売価格が定価より下がることが多いという前提はあるものの、値上げではなく値下げという方向性は好意的に受け止められている。ただしクリートのみ、わずかに値上げとなっている点には注意したい。
ファーストインプレッション
記者は約70kmの試走の末、初期インプレッションとしては好意的な感触を得たとしている。もっとも、新品のシマノ製シューズ・クリート・デュラエースペダルと、スペシャライズド製シューズ・1年落ちのSPD-SLクリート・3年落ちのアルテグラペダルとの比較であるため、公平なテストとは言えない前提を付け加えている。
新品同士の比較になった分、新型ペダルの方がややしっかり固定されている感覚があり、クリップインの動作もよりクリーンに感じられたという。シマノ製ペダルをほぼ10年使い続けてきた記者にとって、クリップインの感覚は完全に自然なもので、「より良い」とまでは言えないものの、これまでも他社製品より優れていたシマノがさらに悪くなっていないという点は好材料だとしている。「バイクとの一体感」については、目立った向上は感じられず、スタックハイトの変化に合わせてサドルを数mm下げた程度で、全体としては従来と近い感覚だったという。
記者は、新システムが旧型よりわずかに優れていることは信じているとしつつも、既存のシマノ製ペダルが壊れない限り、急いで乗り換える必要はないだろうとの見方を示している。特に複数台のロードバイクを所有している場合、後方互換性がないことで、まとめて全ペダルを交換するか、ペダルをバイク間で都度付け替え続けるかの選択を迫られることになり、これがSPD-SLRの普及ペースを遅らせる要因になりそうだという。
今後の焦点 ― 「パワーメーターのライセンス供与」はあるのか
最後に残る大きな疑問は、シマノが今回の新設計を、Favero(ファベーロ)のような他社にライセンス供与し、互換性のあるパワーメーターの登場を許すのか、あるいはSPD-SLの時のように独占状態を維持するのかという点だ。SPD-SLの特許は2003年の発売から約20年後、2022年頃に失効しており、これによりFaveroなどがSPD-SL互換のパワーメーターペダルを製造できるようになった経緯がある(これがシマノのクランク式パワーメーターのシェアを奪う一因になったとも言われている)。
記者によれば、新型SPD-SLRは特許取得予定とのことだが、同様のライセンス供与を行うかどうかについて、シマノは明言を避けているという。記者自身は、このスタックハイト改善という触れ込みが、実はライセンス供与を制限し直すための「都合の良い建前」に過ぎないのではないかという疑念も拭えないと結んでいる。
まとめ
20年ぶりとなる今回の刷新は、地味ながら着実な改良の積み重ねという印象だ。パフォーマンス面での劇的な変化は期待しづらいものの、後方互換性のなさが今後の買い替えサイクルにどう影響するか、そしてパワーメーター市場への影響がどう出るのか、引き続き注目していきたい。
- Josh Croxton, “Shimano releases new SPD-SLR pedal & cleat system in first shift from SPD-SL in 20 years”, Cyclingnews, 2026年9月17日
