ロードレース世界選手権4位のパワーデータ。シモンズが公開したストラバの驚異的数値
2026年のロードレース世界選手権モントリオール大会において、米国代表として4位入賞を果たしたクイン・シモンズ選手が、自身のStrava(ストラバ)でレース中のパワーデータを公開しました。
本記事では、海外自転車メディア『Cycling Weekly』の報道をもとに、276kmにおよぶ過酷なレースを走り抜いた同選手の平均パワーや正規化パワー(NP)、心拍数などの具体的な数値を整理し、トップ集団で戦い抜くために必要とされる驚異的な身体能力について客観的に解説します。
クイン・シモンズ、世界選手権を走り切ったストラバのパワーデータを公開 ― 4位入賞の裏にあった数字

世界選手権には、他のレースにはない独特の何かがある。パリ〜ルーベを除けば、これほどの熱量を持つレースはないかもしれない。グランツールや一部のクラシックレースが、時に「演出されている」ようにすら感じられる展開になる一方(特定の選手やチームが圧倒的に強い場合は特に)、世界選手権はむき出しの、まさに自転車版の殴り合いのような一戦になる。
すでに脚に大きな疲労を溜め込み、チーム外からの援護も受けられない状況の中、選手たちはモン・ロワイヤル周回コースで何度も何度も互いに削り合っていた。疲労、必死さ、そして執念 ― そのすべてが、世界中の視線の前でむき出しになっていた週末だった。
モントリオールでのこの容赦ない激闘を見て、あの最前線で戦うために何が必要なのかと考えた人は、4位でフィニッシュしたクイン・シモンズ選手(米国)のデータに、その答えの一端を見つけられるかもしれない。
- シモンズ選手は4位入賞、レース距離は276km、移動時間6時間24分56秒
- 平均パワー291ワット、正規化パワー(NP)は361ワットという驚異的な数値に
- 平均心拍数150bpm、最大心拍数は190bpm(モン・カミリアン=ウード登坂8回目の頂上付近で記録)
- ブランドン・マクナルティ選手が優勝し、米国が世界タイトルを獲得
ストラバ投稿名は「リッキー・ボビー」
シモンズ選手はチームメイトのマット・ヨルゲンソン選手、そして今大会新王者となったブランドン・マクナルティ選手と同様、自身のライドをストラバに投稿している。3人のデータはいずれも、276km(171マイル)という常軌を逸した距離、長時間にわたるサドル上での戦い、そしてモン・ロワイヤルの複数周回による凶悪なプロファイルを物語っていた。
しかしシモンズ選手 ― 架空のNASCARドライバーにちなんだ「リッキー・ボビー」という偽名で投稿している ― は、プロ選手のデータとしては珍しい「パワー」の数値も公開しており、トップ集団に食らいつくために何が必要だったのかを、より深く物語る内容になっている。
このポップカルチャーへの言及は名前だけにとどまらない。シモンズ選手は今回のライドに「Someone PLAY FREEBIRD(誰かフリーバードをかけてくれ)」というタイトルを付け、説明欄には映画『ミラクル』(1980年米国アイスホッケー代表の奇跡の金メダルを描いた作品)の台詞を引用し、「10回やれば9回は負けるかもしれない。でも今日は違う」と綴っている。
肝心のパワーデータ

- 移動時間:6時間24分56秒
- 平均パワー:291ワット
- 正規化パワー(NP):361ワット
- 平均心拍数:150bpm
- 最大心拍数:190bpm(モン・カミリアン=ウード8回目の登坂終盤、ファンデルプール選手・ログリッチ選手と共に先頭を走っていた際に記録)
- ストラバの「アチーブメント」を複数獲得。中でも、コース序盤の高速道路橋区間「Pont de 35 UP」セグメントでKOM(区間最速)を記録
多数の登坂とペースの変化を踏まえれば、平均291ワットという数値が、正規化パワーでは361ワットという驚異的な数字に跳ね上がっている点は特に注目に値する。最大心拍数190bpmは、マチュー・ファンデルプール選手、プリモシュ・ログリッチ選手と共に先頭集団で走っていた、モン・カミリアン=ウード8回目の登坂を越えた瞬間に記録されたものだ。
本人のコメント
レース後、シモンズ選手はオランダ公共放送NOSの取材に対し「サイクリングでは、立てた計画通りにいかないことが何度もある。毎年たくさんのレースを落としている。昨晩のミーティングで ― みんな違うチームに所属しているけれど ― 『何があっても、アメリカ人の誰かが表彰台でフィニッシュする必要がある』と話し合った。そして僕は『みんな、何だって起こり得る。僕らは表彰台を目指して走るけど、こういう走り方をすればもっと大きなことが起きるかもしれない』と言ったんだ。そして実際、その通りになった」と振り返っている。
メダル圏外となる4位という結果については「メダルを逃したことなんて、チームがジャージ(金メダル)を獲ったんだから、誰が気にするというんだ」と、あっさりとした様子で語っている。
まとめ
276kmという長丁場、凶悪な周回コース、そして先頭集団での駆け引き ― その全てを物語る291ワット・正規化パワー361ワットという数字は、世界選手権という舞台で上位に食い込むために何が必要かを雄弁に物語っている。米国チームが個人メダルだけでなく、マクナルティ選手の優勝によって世界タイトルそのものを勝ち取ったことも含め、今大会は米国勢にとって記憶に残るレースとなった。
- James Shrubsall, “Quinn Simmons’ Strava power data shows just what it takes to be one of the best in a brutal World Championships road race”, Cycling Weekly, 2026年9月29日
