「ポガチャルを倒す唯一の方法はTTだ」元世界王者デュムランが語る2027年ツールの行方
無敵を誇るタデイ・ポガチャルを止める術はあるのか? 2027年のツール・ド・フランスのコースが発表され、2013年以来最長となる合計71kmにも及ぶ個人タイムトライアル(TT)の設定が大きな話題を呼んでいます。
本記事では、元TT世界王者でありツール総合2位の実績を持つトム・デュムランが、海外自転車メディアに語った興味深い考察をご紹介します。
「ポガチャルを倒す唯一の方法はタイムトライアルの距離を使うことだ」と断言する彼の視点から、現TT世界王者のレムコ・エヴェネプールに巡ってきた絶好の勝機や、大会主催者が意図したかもしれない「打倒UAE」のコース設計の裏側を紐解きます。
ポガチャルを倒す唯一の方法は、TTの距離だ

元TT世界王者で、ツール・ド・フランスの総合2位にも入ったトム・デュムランが、2027年大会のコースは、レムコ・エヴェネプールに大きく有利だとの見方を示した。個人タイムトライアル(TT)の距離が大幅に増えたことについて、「ポガチャルを倒す唯一の方法は、タイムトライアルの距離を使うことだ」とまで話している。
- デュムランはオランダ公共放送NOSの取材に対し、2027年のコースについて、TTの距離が長いことが最大の特徴だと語った
- 2027年の個人TTは、ブロワ〜シャンボール(第7ステージ、38km)とトゥールーズ周辺(第16ステージ、33km)の合計71km
- TTを得意とする選手にとっては、2013年以来、最も恵まれたコース構成になる
- デュムランは、山頂フィニッシュが少なくても、レース終盤まで勝負がもつれる展開が生まれるのではないかと見ている
- 今年のツールは、早い段階で大勢が決まったと振り返り、主催者がUAEとポガチャルの支配を抑えようとしているのでは、とも分析
デュムランとツールのTTの歴史
- 元ヴィスマ・リースアバイク所属。2017年にTTの世界選手権を制した
- 2013年から2020年までツール・ド・フランスに出場
- 2013年のツール初出場は、チームTT1本と個人TT2本を含む、合計90kmのTTがあった大会
- 2018年は総合2位(総合優勝はゲラント・トーマス)。この年のTT合計は66.5km
デュムランが初出場した2013年大会のTT距離は90km(チームTT1本、個人TT2本)で、元記事によれば、これが2027年の71kmに至る前の最長だった。同誌は、こうしたコースであれば、現役時代のデュムランも大きな恩恵を受けたはずだと見ている。
コース発表を受けて ― 英国スタートとTTへの思い
デュムランは、ASOがパリで正式に発表した2027年のコースについて、NOSにこう語っている。まず、イギリスでのグランデパール(大会の初日)については、自分自身も2014年にイギリスからスタートしており、それは「絶対的に素晴らしく、信じられないほどの経験だった」と振り返り、再びイギリスに戻ることを喜んだ。
ただし、それは以前から分かっていたことだ。まだ明らかになっていなかったのは、今回のツールに膨大な距離のタイムトライアルが組まれているという点だとデュムランは言う。近年のグランツールのコースは、TTの距離がごくわずかな傾向にあっただけに、これが今回のコースの最も際立った特徴だと指摘している。「ざっと70kmの個人TTがあるなんて、間違いなく胸が高鳴る。レムコ・エヴェネプールも同じ気持ちだろうと思う」。
TTの距離はなぜ減ってきたのか ― 歴史を振り返る
デュムランやエヴェネプールのようなTTスペシャリストは、いわば「過ぎ去った時代」の子どもたちのように感じているかもしれない。ツールにはかつて、はるかに多くのTTが組み込まれており、それは創成期だけでなく、1980年代、さらには2000年代前半まで続いていた。
- TT距離が100km未満となった最初の年は2008年(1975年以来)。この年から、長いTTを避ける傾向が始まったとされる
- TTの総距離が100kmを超えた最後の大会は2012年。すべて個人TTで、2027年よりも個人TTの距離が長かった最後の年
- デュムランが初出場した2013年は、チームTTを含めて合計90km
- 2027年は合計71km。2013年以来、TTスペシャリストに最も優しいコースとなる
2027年の個人TT
| ステージ | 区間 | 距離 |
|---|---|---|
| 第7ステージ | ブロワ〜シャンボール | 38km |
| 第16ステージ | トゥールーズ周辺 | 33km |
| 合計 | 71km | |
個人TTの中で最も長い第7ステージでも38kmにとどまり、2つ目のトゥールーズ周辺のTTは、それよりわずかに短い33kmだ。それでも合計71kmという距離は、近年のツールと比べれば大きな変化といえる。
「主催者は、UAEとポガチャルの支配を抑えたいのでは」
デュムランは、山頂フィニッシュが少ないにもかかわらず、今回のコースの方が、むしろレース全体としては面白くなるかもしれないと示唆している。その背景には、5度の総合優勝を誇るタデイ・ポガチャルと、彼を擁するUAEチームエミレーツ-XRGの圧倒的な強さがある。
「前回のツールは、かなり早い段階で事実上、結果が決まっていた」とデュムランは振り返る。「ツールの主催者は、UAEとポガチャルの支配を何とか抑えたいと考えていることは明らかだと思う。レースの終盤近くまで接戦になるようなコースを設計することでね。ポガチャルを倒す唯一の方法は、タイムトライアルの距離を使うことだ」。
まとめ
個人TTの距離を大きく増やした2027年のコースは、元TT世界王者から見ても、エヴェネプールのようなスペシャリストに大きな追い風となる内容だ。主催者の狙いが、ポガチャルの支配を抑えて終盤まで勝負をもつれさせることにあるのだとすれば、その効果が実際に表れるかどうかは、来年7月のレースで明らかになる。
- Katy Madgwick, “‘The only way to beat Pogačar is through time trial kilometres’ – Tom Dumoulin backs Remco Evenepoel at 2027 Tour de France”, Cyclingnews, 2026年10月24日
