【素朴な疑問】ロードバイクに「電動ブレーキ」が存在しない6つの理由。バッテリー切れ=死のリスクとは?
結論から言うと、電動ブレーキが作られない最大の理由は、「安全性の担保が不可能に近いから(構造的欠陥)」です。
変速なら、動かなくても「重いギアで坂を登る」だけで済みますが、ブレーキが動かないと「止まれずに衝突する」ことになります。 具体的にどのようなリスクがあるのか、6つのポイントで解説します。

自転車に「電動ブレーキ」が存在しない6つの理由
変速は「Di2(電動)」が当たり前になり、アシスト自転車も普及している今、ふとした疑問が湧きませんか?
「なぜ、ブレーキだけは未だにワイヤーや油圧(アナログ)なのか?」
技術的な壁だけでなく、「一度でもミスれば即死する」という恐ろしい理由がありました。 今回は、ロードバイクに電動ブレーキが存在しない理由を、技術・法律・安全性の観点から徹底解説します。
1. 「電気信号」に命を預けられない
電動ブレーキの仕組みは、「レバーを握る(スイッチON)→ 電気信号 → モーターが作動 → ブレーキが締まる」という流れになります。 これには以下の致命的なリスクが伴います。
- 電気的遅延(ラグ): 時速50km以上で下るロードバイクにおいて、コンマ数秒の遅れは命取りです。人間の指の感覚と、モーターの動作にわずかでもズレ(ラグ)が生じると、コーナーを曲がりきれません。
- 通信エラー・断線: 走行中の振動でコネクタが一瞬でも接触不良を起こしたら? その瞬間にブレーキが必要だったら? ——想像するだけでゾッとします。
2. バッテリー切れ = 即、ノーブレーキ
電動変速(Di2など)を使っている人なら経験があるかもしれませんが、バッテリー切れは忘れた頃にやってきます。
- 変速の場合: ギアが変わらないだけ。そのまま家まで帰れます。
- ブレーキの場合: 止まれません。
下り坂の途中でバッテリーが尽きた瞬間、あなたの自転車は「制御不能の鉄の塊」と化します。この「バッテリー切れ=死」というリスクがある限り、メーカーは製造責任(PL法)の観点からも絶対に採用できません。
3. 「二重化(バックアップ)」すると重すぎる
「じゃあ、飛行機みたいに予備電源や予備回路を積めばいいじゃないか」と思うかもしれません。これを冗長化(リダンダンシー)と言います。
しかし、安全のためにシステムを二重・三重にすると…
- バッテリーが巨大化する
- モーターや配線が増える
- 機械式バックアップ(完全手動ブレーキ)
- 結果、ママチャリ並みに重くなる
「1gでも軽く」を追求するロードバイク市場において、重くて高価なシステムは誰も買いません。
4. 雨・汗・泥… 過酷すぎる環境
ロードバイクは雨の中を走ることもあれば、真夏の汗がハンドルに滴り落ちることもあります。 電動変速機は防水性を高めていますが、ブレーキとなると話は別です。
- スイッチの接点不良
- モーター内部への浸水
- コネクタの腐食
これらが一箇所でも発生すればブレーキ不能になります。自動車レベルの対環境性能(防塵防水)を持たせるには、コストが掛かりすぎて現実的ではありません。
5. そもそも「油圧ディスク」が優秀すぎる
これが最大の理由かもしれません。現代のロードバイクの主流である「油圧ディスクブレーキ」が、すでに完成されたシステムだからです。
- 軽い力で止まる: 指一本で強力な制動力が得られる。
- ラグがない: 液体の圧力(パスカルの原理)を使うため、入力=出力のタイムラグがゼロ。
- 信頼性: 電池不要。物理的にホースが切れない限り動く。
電動化することで得られるメリット(力がいらない等)は、すでに油圧式で実現できてしまっているのです。わざわざリスクを冒して電動化するメリットが「ほぼゼロ」なのです。
6. 日本の法律の壁(道交法)
最後に法律の問題です。 日本の道路交通法(施行規則)では、自転車のブレーキについて以下のように定められています。
「運転者がハンドル部分から手を離さずに操作できるものであり、かつ、その作動が運転者の力により車輪の回転を摩擦等によって制動させる構造のものであること」
電動ブレーキ(バイ・ワイヤ)の場合、「運転者の力により(人力で)制動させている」とみなされない可能性があります。 つまり、公道を走る自転車として認められないリスクが高いのです。
ブレーキは「アナログ(油圧ディスク)」こそが最強
| 比較項目 | 電動ブレーキ (未採用) | 油圧ディスク (主流) |
| 信頼性 | × エラー・断線リスクあり | ◎ 物理的に直結 |
| 電源 | × 切れたら止まれない | ◎ 不要 |
| 反応速度 | △ わずかなラグの可能性 | ◎ 瞬時に伝達 |
| 重量 | × 重くなる | ◎ 軽い |
ロードバイクにおいて、「命に直結する部分はアナログ(機械式・油圧式)に限る」というのが、技術者とサイクリストの共通認識です。
どんなにテクノロジーが進化しても、あなたの握力がダイレクトにブレーキパッドに伝わる「油圧式」こそが、今のところ人類が到達した最も安全なシステムなのです。
本記事の技術的・法的見解は、以下の情報をベースに構成しています。
- 国土交通省 / 警察庁
- 道路交通法施行規則 第9条の3(制動装置の基準)
- 自転車のブレーキに関する法的要件(人力操作の必要性など)について。
- シマノ (SHIMANO) 技術資料
- 油圧ディスクブレーキの構造とメリット
- なぜ油圧式が採用されているか、そのレスポンスと制動力の仕組みについて。

