ポガチャル選手の鎖骨手術が成功。ブエルタ落車後の経過と復帰の見通し
ブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージでの落車により、途中棄権となったタデイ・ポガチャル選手について、左鎖骨の手術が無事に成功したことが所属チームから発表されました。
本記事では、海外自転車メディアの報道をもとに、手術の状況やチームメイトが証言した落車の原因、そして世界選手権をはじめとするシーズン終盤の主要レースへの復帰見通しについて整理して解説します。
ポガチャル選手、鎖骨手術は成功
土曜のブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージで途中棄権となったタデイ・ポガチャル選手(UAEチームエミレーツ-XRG)が、月曜午後に左鎖骨の手術を受け、成功したことがチームから発表された。世界チャンピオンは経過観察のためバルセロナの病院に数日間入院を続ける見通しだが、シーズン終了までにレースへ復帰できるかどうかについて、現時点で明確な見通しは示されていない。

- 月曜午後、左鎖骨の手術が実施され成功。経過観察のため入院を継続
- チームメイトのシヴァコフ選手の証言で、落車はボトルで給水中に路上の障害物へ接触したことが原因と判明
- スペイン紙報道では、手術がプレート・ピンを使う複雑なものだったとされ、モントリオール世界選手権への出場はほぼ絶望的との見方
- チーム代表ジャネッティ氏は「シーズン終了前の復帰可否を判断するのはまだ早い」とコメント
- 今回の途中棄権は、ポガチャル選手にとって初めてグランツールを完走できなかったケースとなった
落車の瞬間 ― チームメイトが語った経緯
落車が起きたのは、シェラコへ向かう土曜の混沌としたステージ、ゴールまで残り約31kmの地点だった。ポガチャル選手は道路左側にあった岩とみられる物体に接触し転倒。この日まで2位エンリク・マス選手に4分近いリードを築き、開幕週にすでに3勝を挙げるなど、スペインのグランツール(自身が唯一制していない3週間レース)で圧倒的な強さを見せていた最中の出来事だった。
一緒に落車に巻き込まれたチームメイトのパヴェル・シヴァコフ選手は、日曜にポッドキャスト番組「The Cycling Podcast」の取材に応じ、当時の状況を証言している。ポガチャル選手はボトルから水分補給をしていた最中に、路上の岩か何かの物体に接触してバランスを崩したという。
シヴァコフ選手は「彼のすぐ後ろを走っていた。ボトルを飲んでいる最中に、この岩か何かにぶつかってバランスを崩した。そこから彼にできることは何もなかった」と説明。集団の中でも比較的良いポジションを取れていたとしたうえで、「もし両手でハンドルを握っていたら、違う結果になっていたかもしれない。片手でハンドルを離した状態だと本当に無防備になり、自分の身を守ることができなくなる。ただの不運としか言いようがない」と振り返っている。
路上で医療スタッフの処置を受けた後、血まみれで傷ついた様子のポガチャル選手は一度自転車にまたがろうとしたものの、すぐに首を振ってそれを諦め、救急車で搬送された。3週間の完全制覇という目標は、一瞬にして絶たれることになった。

診断内容と手術の経過
その日の夜、UAEチームの医療責任者エイドリアン・ロトゥンノ氏が、脳震盪、転位を伴う左鎖骨骨折、安定型の第7頸椎骨折、複数の擦過傷という診断内容を明らかにしていた。ロトゥンノ氏は神経学的な損傷やその他の負傷はないことも確認しており、脳震盪への配慮から鎖骨の手術は月曜午後まで見送られていた。
- 月曜午後、手術の許可が下りた後に左鎖骨の手術を実施、無事成功
- 術後の経過観察のため、数日間入院を継続
- 準備が整い次第、帰国してチーム医療スタッフの管理のもとリハビリを開始
- 回復プロセスは引き続き注意深く見守っていく方針
本人が病室から投稿した自撮り写真は、傷を負いながらも比較的前向きな様子を見せているが、シーズン残り期間の見通しには大きな疑問符がついている。バルセロナの地元紙エル・ペリオディコの報道によれば、月曜の手術はプレートとピンを用いて鎖骨を再構築する複雑なものだったとされ、これにより9月末にモントリオールで行われる世界選手権ロードレースでのタイトル防衛はほぼ不可能になったとみられている。

史上最高クラスのシーズンが一変
ブエルタ第8ステージを迎える時点まで、ポガチャル選手は自転車競技史上でも屈指のシーズンを歩んでいるように見えていた。今シーズンここまで、ストラーデ・ビアンケ、自身初のミラノ〜サンレモ、ツール・ド・フランドル、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、ロマンディ・ツアー、ツール・ド・スイスを制し、パリ〜ルーベで2位、そしてツール・ド・フランスでは5度目の総合優勝を圧倒的な強さで達成していた。
7年ぶりとなるブエルタ復帰からわずか8日目、すでに2位マス選手に3分40秒差、完走済みステージの半数にあたる3勝を挙げ、現代サイクリング史上でも屈指の支配的な3週間になるかと思われていた。しかし結果として、今回のブエルタはポガチャル選手にとって初めてグランツール、そしてステージレースそのものを完走できなかったケースとして記憶されることになる。同時に、出走したグランツールで表彰台に立てなかった初めてのケースでもある。
前回の大きな落車は2023年
今回の途中棄権は、2023年リエージュ〜バストーニュ〜リエージュで手首を骨折して以来、ポガチャル選手が主要レースで落車によりリタイアした初めてのケースとなる。あの時の負傷は長期の休養につながり、同年のツール・ド・フランスではコンディション不足からヨナス・ヴィンゲゴー選手に完敗を喫した経緯があった。
今後の目標だった一連の秋のレース
ブエルタの後、ポガチャル選手は9月27日にカナダで行われる世界選手権ロードレースでの3連覇(タイ記録)を目標に掲げていた。その後は母国スロベニア開催の欧州選手権に出場し、さらにイル・ロンバルディアでの6勝目(現在並んでいるファウスト・コッピの記録を単独で更新)を狙う予定だった。
しかし、コースとの相性の良さを踏まえても、劇的な回復がない限り3年連続の世界タイトルはきわめて厳しい情勢となった。仮に10月上旬の欧州選手権に間に合ったとしても、今回の予期せぬ長期離脱によりコンディションには大きな影響が出るとみられている。
チーム代表「判断はまだ早い」
UAEチームエミレーツ-XRGの代表マウロ・ジャネッティ氏は、仏ラジオ局RMCスポールの取材に対し、シーズン終了前に主将が復帰できるかどうかについて「判断するのはまだかなり早い」との考えを示した。
ジャネッティ氏は「この議論は避けようとしてきた。今は決断を下すべきタイミングではないからだ。まずは火曜か水曜にかけて、回復の状況と手術の経過を見る必要がある。そこから、シーズン終了までに復帰する時間があるかどうか、もう少しはっきりとした見通しが立てられるはずだ」と説明。「タデイが脳震盪から回復した状態で、もう少し落ち着いて臨める段階になってから判断したい。感情で決断を下す時ではなく、数日は待つ必要がある」と述べている。

まとめ
以前の記事でお伝えした診断内容・専門医の見立てに続き、今回の手術成功という節目を経て、ポガチャル選手は本格的な回復・リハビリの段階に入ることになる。世界選手権をはじめとする秋のビッグレースへの出場可否について、チームは数日かけて慎重に判断する方針を示している。続報が入り次第、改めてお伝えする。
- Ryan Mallon, “Tadej Pogačar’s collarbone surgery successful after crashing out of Vuelta in red jersey – but timeline for racing return still unclear”, road.cc, 2026年9月1日
