自動車ブランドが手がけた自転車の歴史。スーパーカーからe-bike参入と撤退の舞台裏【フェラーリ・ポルシェ・ロータス】

みぞお
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

自動車メーカーが自社のブランド名や技術を掲げ、自転車業界へと参入する事例は古くから繰り返されてきました。環境意識のアピールや新たな富裕層の開拓など、その参入動機やアプローチはメーカーによって大きく異なります。

本記事では、英自転車専門メディア『BikeRadar』の特集記事をもとに、ブガッティ、ポルシェ、フェラーリ、ロータス、テスラなど、自動車メーカー7社が手がけた歴代モデルと、その後の顛末について客観的に解説します。

五輪で金メダルに輝いた歴史的成功例から、近年のe-bike事業からの撤退劇まで、各社の挑戦の足跡を整理しました。

スポンサーリンク【PR】

自転車業界に参入した自動車メーカー7社、その顛末

車もタイヤも(たいていは)乗り手もいる ― 自動車と自転車の共通点は、突き詰めればそれくらいしかない。それでもなぜ、自動車メーカーは繰り返し自転車を発売するのだろうか。環境意識をアピールするチャンスと捉えているのか、あるいはもっと打算的に、新たな顧客層への認知度向上を狙っているのか。真相は定かではないが、フレームに自社のロゴを刻んできた自動車ブランドが、途切れることなく現れ続けてきたのは確かだ。うまくいくこともあれば、たいていはそうでもない。今回は、自転車を「次の一手」と見定めた自動車メーカーたちの取り組みと、その顛末を振り返る。

この記事のポイント
  • ブガッティは5kg台の限定モデルから、Factor社と組んだ新型「Factor One」まで展開
  • フォルクスワーゲン・ポルシェは電動アシスト自転車に参入も、ポルシェは2026年5月に事業終了
  • フェラーリはコルナゴ・ビアンキと長年コラボ、うち1台は欠陥で自主回収に
  • ロータスはトラックバイクで五輪金メダル・ツール黄色ジャージに貢献した唯一の成功例
  • テスラは2〜5歳向けバランスバイクという意外な形で参入

※価格は英国・米国での参考価格をもとに、2026年9月時点のレート(1ポンド=約216円、1ドル=約159円)で円換算した参考値です。

1. ブガッティ ― 5kg台の限定モデルから「Factor One」へ

フォルクスワーゲン傘下で超高級車を手がけるブガッティも、自転車への進出を試みたブランドの一つだ。2017年、同社は入手可能な限りのエキゾテックな軽量パーツをカーボンフレームにボルトオンした、5kg台のフラットバー自転車を発売。カラーリングは同社のスーパーカー「シロン」(英国参考価格250万ポンド、約5億4,000万円)に合わせられていた。667台の限定生産(と言っていいのか)モデルで、実際に何台売れたのかは定かではない。価格は約620.1万円(3万9,000ドル)。シロンや、それに合わせたヨットの価格からすればごく僅かな金額だった。

Bugatti Factor One

より最近になって発表されたのが、より安価な(そしておそらくより速い)「Bugatti Factor One」だ。「安価」と言っても約451.4万円(2万899ポンド)であり、3万9,000ドルと比べての話ではある。ダウンチューブに主張の強いブガッティのロゴが入る前から、そのデザインは十分に目を引く。ご近所のなんちゃってプロを相手にドラッグレースを挑みたいなら、これが選択肢になるかもしれない。

2. フォルクスワーゲン ― 「世界一安全なe-bike」を標榜

ブガッティの親会社であるフォルクスワーゲンも、2026年に自転車熱に取り憑かれ、自称「世界一安全なe-bike」を発売した。単に自社名をバイクに冠するのではなく、フォルクスワーゲンは自動車の安全技術をそのまま持ち込んでいる。

リアカメラ・レーダーが後方の映像をハンドル周りのディスプレイにストリーミング配信し、後ろから迫るブガッティの爆音に気づかなくても状況を把握できるようにしている。このリアカメラはスマートグラスとも連携し、ヘッドアップディスプレイやナビゲーション補助としても機能する。500ルーメンのブレーキ・ウインカー表示が可能なライトを備えたスマートヘルメットも用意されている。

もっとも、同様の機能を備えたメルセデスAMGペトロナスF1チームの電動自転車(N+ Bikesとの共同開発)に、発売のタイミングでは先を越されてしまった格好だ。

3. ポルシェ ― e-bike事業から2026年5月に撤退

負けじと、同じくフォルクスワーゲン傘下のポルシェも独自のe-bike子会社を持っていた。2022年に買収した電動アシストユニットブランド「Fazua」も、この事業に組み込まれていた。

2026年5月、事業終了

ポルシェは2026年5月、e-bike事業会社を閉鎖し、Fazuaの電動ユニットシステムの販売も終了した。同社会長は「e-bike駆動システムを取り巻く市場環境が根本的に変化した」ことを理由に、本業への集中に回帰する必要があると説明している。2026年後半時点でも、ポルシェの電動マウンテンバイクや関連グッズ、さらには愛車のポルシェでe-bikeをトレイルまで運ぶためのリアラックまでは、引き続き購入可能な状態にある。

4. フェラーリ ― コルナゴ・ビアンキとの長年のコラボ

イタリアの名門自転車ブランドこそ、フェラーリにとって自然なパートナーだと思われるかもしれない ― まあ、そうかもしれない、というところだ。

「イタリアの暴れ馬」ことフェラーリは、ビアンキ、そしてより頻繁にはコルナゴから、数々の限定モデルに自社名を冠してきた。コルナゴとは1987年、自社のエンジニアリング技術を初めて提供して以来の関係だ。

コルナゴ×フェラーリの主なコラボモデル
  • Colnago C35(1988年):
    • 最初期のモノコックフレームの一つ、カーボン/ケブラー複合素材製。赤いホルスリーニュ仕様は2台のみ製造、赤い5本スポークホイールと金メッキのカンパニョーロ「C-レコード」8速グループセットを装備
  • Colnago CF7(2008年):
    • 99台限定のカーボンモデル。ダウンチューブを補強するストラットにより剛性・パワー伝達を強化
  • Colnago V1-r フェラーリ版(2015年):
    • 現行モデル「V5Rs」の前身にあたるモデルの100台限定版。同年、フォーク不良により自主回収の対象に

一方、2017年に発表された「フェラーリ×ビアンキ」のパートナーシップは、いくつかのコンセプト・試作機を生み出したものの、スタートラインを出ることはついになかったようだ。

5. アストンマーティン ― Factor、J.Laverackとのコラボ

アストンマーティンも、高級自転車ブランドとの長いコラボ歴を持つ高性能自動車ブランドの一つだ。

アストンマーティンの自転車コラボ史
  • One-77(2012年):
    • 「モータースポーツ由来のデータロギングシステム」を搭載。当時としては珍しかった油圧ディスクブレーキも、Hope製ケーブルコンバーターを介して採用。価格は約540万円(2万5,000ポンド)。フレームは、その後自転車設計で存在感を高めていく新興ブランド「Factor」と共同開発
  • Aston Martin Storck(2016年):
    • 当時勢いのあったブランドStorckとのコラボ。SRAM・Zippの最高級パーツと、光沢のあるパール塗装を採用。公称重量5.9kg、当時としては破格の約340.8万円(1万5,777ポンド)
  • J.Laverack「.1R」(2023年):
    • 英国拠点のチタンバイク専門ブランドJ.Laverackとのコラボ。「ボルトレス」に見えるデザインが特徴で、カーボン製クランクアームに3Dプリントのチタン製チップを組み合わせ、クランク長を自由に選べる仕様。生産台数は100台に設定され、2026年9月時点で残り9台まで販売が進んでいるという

6. ロータス ― 五輪金メダル・ツール黄色ジャージに貢献した「本物」

多くの自動車メーカーが自社名をバイクブランドの製品に冠するだけにとどまる中、ロータスは自ら自転車業界に衝撃を与えた数少ない例だ。モノコックカーボン製のオリンピック・トラックバイク「タイプ108」は、1992年バルセロナ五輪でクリス・ボードマン選手が金メダルを獲得した際の愛機として知られている。

ボードマン選手はその後継モデル「ロータス110」に乗り、1994年ツール・ド・フランスで黄色いジャージを獲得した。その後UCIの「ルガーノ憲章」により、ダウンチューブを持たないバイクフレームが禁止されることになる。

より近年では、ロータスは電動自転車にも進出しており、2023年発表の「タイプ136」(約432万円、2万ポンド)は1.2kgのモーターシステムを搭載。フォークの幅広スタンスやシートステーのデザインは、2020年東京五輪向けにロータスが設計したトラックバイク「Hope HB-T」の意匠を受け継いでいる。

7. テスラ ― 「大富豪の子供」向けバランスバイク

一方テスラは、文字通り小さく始めた。2〜5歳向けのバランスバイクを発売したのだ。

テスラのバランスバイク

未来的なデザインと、電動モーターこそないものの凝った技術が盛り込まれている。マグネシウム製フレームに、成長に合わせて調整できるシートを採用。参考価格は約35,800円(225ドル)と、少なくともあなたが兆万長者であれば、十分手頃な価格と言えるだろう。

まとめ

限定生産の超高級モデルから、五輪の歴史に名を刻んだトラックバイク、そして子供向けバランスバイクまで ― 自動車メーカーが自転車業界に足を踏み入れる動機も結果も、実に様々だ。ロータスのように競技シーンに本物の革新をもたらした例がある一方、多くはブランドイメージの演出にとどまってきた。ポルシェの撤退が示す通り、e-bike市場の競争も決して甘くないことがうかがえる。

出典
スポンサーリンク
ABOUT ME
みぞお
みぞお
おっさんサイクリスト
関西在住の自転車DIY愛好家。 「自転車組立はプラモデルみたいで面白そう」という直感をきっかけに、ロードバイクの世界へ。 現在は、自転車の組立(バラ完)・メンテナンス情報のほか、10年以上続くフェリー輪行旅の記録、さらに家電修理などのライフハックも発信中。 「自分の手で直して楽しむ」をモットーに、初心者でも真似できる等身大のDIY記録を綴っています。
スポンサーリンク
記事URLをコピーしました