【Wi-Fi × Samba】ファイル転送が遅い!その「意外な真犯人」と劇的に改善する4つの解決策
「有線LANだと100MB/s出るのに、Wi-Fiになった途端に10MB/sしか出ない…」 「リンク速度は866Mbpsと出ているのに、なぜ?」
自作NASやファイルサーバー運用者が必ずぶつかるこの壁。 実は、Samba(Windowsファイル共有)で使われる「SMBプロトコル」は、Wi-Fi環境が大の苦手です。
今回は、なぜ速度が出ないのかという「構造的な欠陥(チャッティな仕様)」と、それを克服するための具体的な対策を解説します。
ファイル転送が遅い理由
【Wi-Fi × Samba】ファイル転送が遅い理由は以下2点が考えられます。
SMBは「おしゃべり」なプロトコルだから
最大の原因はこれです。SMBプロトコルは、別名「Chatty Protocol(おしゃべりなプロトコル)」と呼ばれています。
- データの送り方: 「これ送っていい?」「いいよ」「パケット1送るね」「届いたよ」「次はパケット2送るね」「届いたよ」…
このように、データの塊を送るたびに「確認応答(Ack)」を頻繁に行います。 有線LANのような「遅延(Ping)」がほぼゼロの環境なら問題ありませんが、Wi-Fiは電波の状況により数ミリ秒〜数十ミリ秒の遅延が常に発生します。
このわずかな遅延が積み重なり、結果として「待ち時間ばかりでデータが流れない」状態になり、転送速度が激減します。
Wi-Fiは「半二重(トランシーバー)」だから
有線LANは「送信」と「受信」を同時に行える「全二重通信(電話のようなもの)」です。 しかし、Wi-Fiは仕組み上、送信と受信を同時に行えない「半二重通信(トランシーバーのようなもの)」です。
SMBのような「送って、返事待って、また送る」という往復が多い通信において、この「一方通行しかできない」というWi-Fiの性質は致命的なボトルネックになります。
転送速度の改善策
【Wi-Fi × Samba】ファイル転送速度の改善は以下4つが考えられます。
【基本】5GHz帯(Wi-Fi 5/6)に固定する
もし2.4GHz帯で接続しているなら、今すぐ5GHz帯(IEEE 802.11ac / ax)に切り替えてください。
- 2.4GHz: 電子レンジやBluetoothと干渉しやすく、遅延が大きいためSMBには不向きです。
- 5GHz: 干渉が少なく、帯域幅も広いため、SMBの「おしゃべり」を少しでも早く処理できます。
【設定】SMBのバージョンを確認する(SMB 3.xを使う)
古いNASや設定の場合、効率の悪い「SMB 1.0」が使われている可能性があります。 現在の標準である「SMB 3.0」以降が有効になっているか確認してください。
- SMB 3.0以降のメリット:
- マルチチャンネル: 複数の経路を使って高速化する機能(※Wi-Fi環境では効果限定的ですが、重要です)。
- ラージMTU: 一度に送れるデータ量を増やし、「おしゃべり」の回数を減らします。
【確認方法】 PowerShell(管理者)で Get-SmbConnection と入力し、「Dialect」の項目が3.1.1などになっていればOKです。
【裏技】「ロボコピー(Robocopy)」を使う
Windows標準の「エクスプローラー(ドラッグ&ドロップ)」でのコピーは、実はあまり効率が良くありません。 大量のファイルを転送する場合は、コマンドラインツールの「Robocopy」を使うと、マルチスレッド転送によりWi-Fiの帯域を使い切れる場合があります。
- コマンド例:
robocopy "転送元" "転送先" /MT:8- /MT:8 は「8本同時に転送する」という意味。遅延による待ち時間を並列処理で埋めます。
【最終手段】プロトコルを変える(FTP / HTTP)
動画視聴などは別として、「ファイルの移動」だけならSamba(SMB)にこだわる必要はありません。 遅延に強いプロトコルを使うのが最も手っ取り早い解決策です。
- FTP (File Transfer Protocol):
- 確認応答がSMBほど頻繁ではないため、Wi-Fi環境でも有線に近い速度が出やすいです。
- WebDAV / HTTP:
- 大きなファイルをドンと送るのが得意です。
NAS側でFTPサーバーをオンにし、PC側では「WinSCP」や「FileZilla」などのソフトを使って転送してみてください。「今までの苦労は何だったんだ」と思うほど速くなるはずです。
Wi-FiでSMBが遅いのは「仕様」です
「PCが悪い」わけでも「ルーターが壊れている」わけでもありません。遅延に弱いSMBを、遅延が発生するWi-Fiで使っていることが原因です。
- まずは5GHz帯を使う。
- 大量転送ならRobocopyかFTPを使う。
- 可能なら、PCだけでも有線LANにする。
これらを試して、快適なファイルサーバー・ライフを取り戻しましょう!
本記事の執筆にあたり、Microsoftの公式ドキュメントおよびネットワーク技術の専門情報を参照しています。
- Microsoft Learn (SMB Performance):
- SMB のパフォーマンス チューニング
- SMBプロトコルがネットワークのレイテンシ(遅延)に大きく影響される点や、Robocopyのマルチスレッド(/MT)オプションの有効性について解説されています。
- Network World / Tech Target:
- Wi-Fi is Half-Duplex (Wi-Fiは半二重である)
- 有線Ethernet(全二重)と異なり、Wi-Fiは一度に送信か受信の片方しかできないCSMA/CA方式を採用しているため、往復通信(ハンドシェイク)が多いプロトコルではスループットが落ちる原理について。
- Samba.org Wiki:
- Samba Performance Tuning
- socket options(SO_RCVBUFなど)の調整や、SMB2/3の利用推奨について。

